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【江刺の稲】
人生に必要な荷物いらない荷物
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第29回 1998年06月01日
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あえて友人と呼ばせて頂く研究者の方から、農水省の試験場を退職されたとの手紙をいただいた。僕より僅かに年上だが、定年の年齢にはまだ早い。真面目な人柄で、専門の分野の枠にはまらない自由な発想を持った優れた研究者である。仮に意見が違っていたとしても、会えばいつも彼の研究者としての根源的な知的誠実性に共感を感じていた。
受け取った退職の挨拶状には「研究その物が与えてくれた充実感と試験研究機関運営との間の落差に感じるところがあり退職を決意した」とあった。
まだ直接、話を聞いたわけではないが、その人柄を考えれば「職務」としての調査研究はできたとしても、現在の農水省の研究体制での仕事に、研究者としての熱意を持てなくなることもあるかもしれない。人はそれをわがままだというかもしれないし、
「俺、そんな贅沢言えねーよ」という方も少なくないだろう。
今、農業関係のあらゆる職場で同じ様な葛藤を抱えておられる方が沢山いるのではないだろうか。それぞれの立場で問題は異なるかもしれないが、根本的には我が国の社会や農業や組織についての基本的な枠組みの変化にその原因があるのだろう。あるいは変化している現実に行政や組織の論理が噛み合わないことに由来する組織人の葛藤もあるかもしれない。
受け取った退職の挨拶状には「研究その物が与えてくれた充実感と試験研究機関運営との間の落差に感じるところがあり退職を決意した」とあった。
まだ直接、話を聞いたわけではないが、その人柄を考えれば「職務」としての調査研究はできたとしても、現在の農水省の研究体制での仕事に、研究者としての熱意を持てなくなることもあるかもしれない。人はそれをわがままだというかもしれないし、
「俺、そんな贅沢言えねーよ」という方も少なくないだろう。
今、農業関係のあらゆる職場で同じ様な葛藤を抱えておられる方が沢山いるのではないだろうか。それぞれの立場で問題は異なるかもしれないが、根本的には我が国の社会や農業や組織についての基本的な枠組みの変化にその原因があるのだろう。あるいは変化している現実に行政や組織の論理が噛み合わないことに由来する組織人の葛藤もあるかもしれない。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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