ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

江刺の稲

「あたりまえ」だから選ばれる

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第30回 1998年07月01日

  • この記事をPDFで読む
    • 無料会員
    • ゴールド
    • 雑誌購読
    • プラチナ
あの人気漫画「美味しんぼ」が野菜の硝酸態窒素の問題を取上げた「ビッグコミック・スピリッツ(6月1日/8日号掲載)」。その内容は、野菜生産の現状をおおむね正しく伝えており、有機・化学肥料の別なく過剰施肥が作物体内の硝酸態窒素含有量を増やしていることなどの解説も当を得ている。問題の取り上げ方も農業への「告発」というより、むしろ「旬」を無視した消費者の側に反省を促していることが、農業界にとってはせめてもの救いだというべきだろう。
 ついに、というべきだろう。

 あの人気漫画「美味しんぼ」が野菜の硝酸態窒素の問題を取上げた「ビッグコミック・スピリッツ(6月1日/8日号掲載)」。その内容は、野菜生産の現状をおおむね正しく伝えており、有機・化学肥料の別なく過剰施肥が作物体内の硝酸態窒素含有量を増やしていることなどの解説も当を得ている。問題の取り上げ方も農業への「告発」というより、むしろ「旬」を無視した消費者の側に反省を促していることが、農業界にとってはせめてもの救いだというべきだろう。

 しかし、消費者は被害者なのである。

 反省を求められるべきは、農家自身であり、僕を含めた農業関連の商売人たちであり、食にかかわる全ての産業人なのである。そして、土壌の富栄養化(糖尿病化)をここまで看過してきた行政や農業技術の指導体制こそが問われるべきなのだ。

 やがてTV、新聞、週刊誌の中には「硝酸態窒素で汚染された野菜!」という見出しを付けた「告発」報道を始めるものも出てくるだろう。八百屋や量販店の店先あるいは有機をうたうレストランのサラダバーの前で、野菜の硝酸態窒素濃度を計測しながら煽情的な言葉で人々の不安を煽りたてるレポーターも出てくるかもしれない。O―157騒動でのカイワレダイコンの二の舞とはいわないまでも、サラダ野菜の需要は影響を受けることになるだろうし、サラダを売り物にしたレストランの人気にも陰りが出るのではないか。批判はやむをえないとしても、せめて冷静に事実を見つめ解決の道筋を探ろうとするジャーナリストがいてくれることを願いたい。

関連記事

powered by weblio