ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

栄養週期理論を検証する

栄週理論をただの教典にしてはいけない!

本誌の創刊号でご紹介した千葉県八千代市の安原栄一さんは、栄養週期理論を実践する農業経営者である。その安原さんから、この連載に付いての疑問が寄せられた。その疑問とは…。早速、安原さん宅に伺った。
 「よく、作物は何を作ってるんですかって聞かれるんだけど、人間は作物を作ることができるでしょうかね?」

 安原さんにお会いして早々に、その疑問をぶつけられた。意味の良くわからなかった私が言葉に詰まると、安原さんは自ら答えてくれた。

 「(自然が作り出すものだから)人間には多分作れないでしょう。人間にも憲法があるように、栄養週期理論っていうのは畑の中の憲法だからね。畑の中で植物がどうやって生きるかという問題だから、その辺(水や空気、光が作物を作っているということ)がわからないと、いくら解説しても栄養週期理論はわからない」

と連載についての意義まで問われてしまった。

 「新栽培技術の理論体系」(以下「理論体系」)の「第1章第3節 作物体の発育」で次のように述べられている。

 「栽培は一つの技術であるから、自然を模範として、自然の法則の集約的な体系化をはかるための、自然史の正しい理解こそ技術の高度化への正しい手段であろうと思う」

 安原さんは、この連載も栄養週期理論の用語の解説で終わっていては、意味が無いと言う。特に有機化学を理解せずに、栄養週期理論や農業を語ってはいけないのではないかと言うのだ。

 「芽が出て、花が咲いて、実がなって、色がついて人間の口に入るまで、植物がどういう生活史を持っているかを認識して、どういう栽培にするかが問題なんだ。交代期(栄養生長と生殖生長の入れ代わりの期間)の始まりや終わりの時期も、図を描いて一生懸命説明しても全然わからないんだ。それだけ聞いても、何でそんなことが起こるんだ、何で植物はそうなるんだ、と言うことを知らないとわからないんだ。だから有機化学は基礎であって、それがわからないと栄養週期理論は、ただの教典になってしまう」

 栄養週期理論の提唱者の大井上康氏は、作物の部分的な生化学、生理的な知識は作物の発育全体を理解するためには、場合によっては有害でさえあると言う。では大井上氏は「理論体系」の中で有機化学をどのようにとらえているのであろうか。

関連記事

powered by weblio