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すべて食べる人のために

朝市ネット 活動軌跡―(1)

阿武隈川、北上川の二つの大河と幾つもの中小河川が仙台湾に注ぎ込む過程でできあがった扇状地が仙台平野である。
 阿武隈川、北上川の二つの大河と幾つもの中小河川が仙台湾に注ぎ込む過程でできあがった扇状地が仙台平野である。この平野に150万人が住む。もちろん現在の行政上の区割りではない。地理的・地政学的エリアであり、一般的には地域という言葉で表現できる。

 昭和49年まで路面電車が走り、戦前の市街地というのはまさにその電車が走る範囲内のことだった。昭和30年代までは市街地を取り囲むように田畑が広がり、街では町内単位に八百屋があったし、小道小道を決まった挽き売りの人たちが主婦と会話しながら売り歩く姿があった。

 秋に家々では、仙台白菜や仙台地大根を荷馬車で配送する農家から買い、軒下に山と積んで漬物作業までの間乾燥させたものだった。これが私の原風景である。


■地域流通の復活をめざして


 仙台にあるNPOグループのEPF(環境・人間・食糧)ネットワークの呼びかけで「朝市・夕市ネットワーク(略称朝市ネット)」準備会が発足したのは平成7年10月だった。EPFはそれ以前5年にわたって、地域の環境問題、農業問題を研究していた。そこから見えてきた問題のキーワードは耕作放棄、空飛ぶ野菜、消えた農産物、失われた農産物知識、指定産地、共選・共販品目、輸入農産物、広域流通、卸売市場、地域自給、過剰施肥、農業の持つ多面的価値などであった。

 多くの討論の結果として「地域農産物の地域流通と消費は地域農業の振興と農地の保全に役立ち、農業者を含む地域住民の食生活・食文化・食育・環境保全にとって重要な役割を持つ」という結論に達した。

しかし地域流通のパイプは消滅したも同然である。かつては農業協同組合がその機能を担っていた。誰が集荷し、地方卸売市場に搬入し、誰が入札し、誰が販売するのか。もはや生産者が直接流通を担う以外に道はなかった。

 全国津々浦々に産地直売所ができている。直売所はそれぞれの産地に置かれる。したがって物流を必要としない。この直売所で多くの生産者の主婦たちが、売れるノウハウを学んだ。小売業では売れるノウハウの第一は品揃えにある。年間800万円を売った主婦は、お客さんのニーズを記録して翌年に作付けし、品揃えした。加工品を加えて80品目もある。産地直売所の泣き所はお客さんのいない所への立地である。たまたま都市近郊の主要道路への立地であったり、有名観光地の近くへの立地であったりとほんの偶然が明暗を分ける。小売業では30年も前から立地がすべてと言われているのだが。

 朝市ネットが主催する「合同市」はそれぞれの地で産地直売所や市を開いている人たちに、お客さんのたくさんいる都市中央部に出てきてもらい、合同で市を開くことによりお客さん不足を解消し、結果として地域流通を再興させることを狙いとした。

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