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【大泉一貫の農業経営者論】
機関車農家と客車農家
- 東北大学農学部 助教授 大泉一貫
- 第12回 1999年06月01日
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1、兼業農家は農業の担い手か?
私は農業の担い手は、機関車農家つまり農業経営者だけをいうべきだと主張しています。行政は農家であれば皆担い手としています。できるだけ対象者を広くとり縄張りを広げたいという官僚主義がそうさせるのかもしれません。しかしそうすることは農業の担い手を曖昧にしてしまうということになります。
今の農家の実体は、農地所有者という以外に共通するものはなにもないからです。農地を持っていれば皆農業の担い手ということなら、土地を電気部品工場に貸している人は電気製造の担い手となるのでしょうか? 農業のアナロジーでいえばその工場の跡地を空き地にしたとしても彼はやはり製造業の担い手となってしまうのです。そんな馬鹿な話があるはずがありません。彼はあくまで土地所有者なのであって電機製造業者ではないのです。
たとえ幾ばくかの農業生産を行っていたとしても彼を農業の担い手といえるかどうかもきわめて疑問な点です。
多くの農家は、農業をサブの仕事としていることが多く、二股をかけしかもサブの方の職業を取り上げて、その担い手というにはあまりにその職業に対して失礼というものです。ただ、サブであっても芸術のように彼の仕事が社会的に非常に高く評価されているというならそれはそれでまた別でしょうが、そうしたことはあまり考えられないことですし、ましてや農業の場合には全くといって考えられないことです。
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大泉一貫 オオイズミカズヌキ
東北大学農学部
助教授
1949年宮城県生まれ、東北大学卒業、東京大学大学院修了。農学博士。現在東北大学農学部助教授。専門は農業経営学、農業経済学。柔軟な発想による農業活性化を提唱。機関車効果や一点突破、客車農家など数々のキーワードで攻めの農業振興のノウハウを普及。著書に「農業経営の組織と管理」、「農業が元気になるための本」いずれも農林統計協会、「一点突破で元気農業」家の光、「いいコメうまいコメ」朝日新聞、「経営成長と農業経営研究」農林統計協会など。
大泉一貫の農業経営者論
政府による啓蒙・指導そして保護と支配の元に生きてきた「農民」が、「農業経営者」として自ら農業の経営主体の位置に踊り出してきている。しかし、農業界を含めて人々の農業や農業経営についての認識は、従来からの「農民的農業」の論理から解き放されているとは言い難い。研究者として農業経営学への新たな理論構築とともに、各地の農業経営者や関連産業人たちとともに農業の新時代を育てる実践的活動に取り組む大泉一貫氏に、農業経営者のための農業経営論を展開していただく。
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