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【女だからの経営論】
いつもほしいと言われても……
- 三好かやの
- 第28回 1999年06月01日
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ポケットに紙切れと鉛筆
取材に訪れた4月下旬、中根房子さんはハウスでシソの葉の苗づくりに追われていた。芽吹いたばかりの小さな芽を、間隔を開けてせっせと苗床に移しかえていく。相手はまだ生まれたての赤ちゃんのよう。房子さんは1本1本をまるでわが子をいつくしむような手つきで並べていく。
「苗づくりは私の仕事。小さな芽を育てたり、まんべんなく水をあげたり、細やかな女性の感性が十分生かされる仕事だと思うの。お父さんが水やりすると、隙間があいて、うっかりして枯らしてしまったりすることがあるでしょ」
たしかに苗作りはお母さん、おばあちゃんの担当という農家が多い。
「やっぱり女性の命を産み・育てる感性を十分に生かすことで、農家の経営は変わってくると思う。でないと損する部分も多いはず」
とにっこり。そんな房子さんの野良着のポケットには、いつも鉛筆と紙切れが入っている。農作業の合間に気づいたこと、野菜たちの様子、創作童話、短歌、などを書き留めておくのだ。
そうした文章に加え、野菜の食べ方、漬け方などを綴った「畑だより」を発行し続ける。作る側と食べる側を結ぶ架け橋なるB4版のコピーは、この4月で174号を数える。
「書くこと、書き続けることが、私の生きる証です」
夫の通夫さんと結婚して30余年、房子さんは生産者であり続けると同時に、生産の現場の声を伝え続けるメッセンジャーなのだ。
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