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【大泉一貫の農業経営者論】
経営者にとっての「社会」とは何?
- 東北大学農学部 助教授 大泉一貫
- 第13回 1999年07月01日
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1 農業経営者のイメージ
農業経営者という言葉は不思議な言葉である。現代では物を作りそれで生計を立てている者は通常ほとんどが経営者となっている。したがって農・商・工の自営業者はすべて経営者と言っていい。
その経営者を育成しようというのが今の農政課題である。しかし事はそれほど簡単ではない。いくつか理由がある。例えば育てる経営者のイメージや経営者とは何かが明確でないと言うことがある。官僚や学者というサラリーマンが経営者を育てようとしている笑うに笑えない現実もある。
農業経営者にとって当面必要なのは中小企業社長のノウハウであろう。いやそれさえも必要ないのかもしれない。従業員3ないし4人ぐらいの零細企業の運営ノウハウがあればそれで充分なのだろう。ところがこうした零細小経営や中経営は出入りの激しい。安定しないという意味である。誰にでもすぐ作れるがすぐに破産してしまう可能性も高いということだ。電話帳に載ったかと思えば翌年の電話帳からは消えている企業である。
そうした零細企業のノウハウすらない農民と農政官僚が経営者育成をするとすれば、スーパー資金などの低利融資によってオーバーローンの構造を作って大口負債農家を作ってしまうのが関の山である。
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大泉一貫 オオイズミカズヌキ
東北大学農学部
助教授
1949年宮城県生まれ、東北大学卒業、東京大学大学院修了。農学博士。現在東北大学農学部助教授。専門は農業経営学、農業経済学。柔軟な発想による農業活性化を提唱。機関車効果や一点突破、客車農家など数々のキーワードで攻めの農業振興のノウハウを普及。著書に「農業経営の組織と管理」、「農業が元気になるための本」いずれも農林統計協会、「一点突破で元気農業」家の光、「いいコメうまいコメ」朝日新聞、「経営成長と農業経営研究」農林統計協会など。
大泉一貫の農業経営者論
政府による啓蒙・指導そして保護と支配の元に生きてきた「農民」が、「農業経営者」として自ら農業の経営主体の位置に踊り出してきている。しかし、農業界を含めて人々の農業や農業経営についての認識は、従来からの「農民的農業」の論理から解き放されているとは言い難い。研究者として農業経営学への新たな理論構築とともに、各地の農業経営者や関連産業人たちとともに農業の新時代を育てる実践的活動に取り組む大泉一貫氏に、農業経営者のための農業経営論を展開していただく。
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