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BOOK REVIEW

「日本」とは何か 日本の歴史

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著者:網野善彦
定価:2,310円(税込)
 出版社:講談社


百姓の遺伝子は死なない

震災後、改めて水と木と土の関係を、自然の摂理に従ってイメージしてみた。山に降った雨は樹木と大地に染み渡り、溜まった水は地表に湧き出て川となって、やがて海へと注ぐ。つまるところ、林業・農業・漁業の営みの連携である。その絆を大切にしてきた地域が東北地方には数多く残っているため、沿岸地域の被災は特にショックだった。その時、ふと手が伸びたのは網野善彦の著書だった。

網野歴史学の真骨頂はこれまでの日本の国民像を検証し、東アジアに開かれた日本列島の多様性を描ききった点にある。特に江戸時代における考察は群を抜いている。「百姓」とはみな農民だったのか。それらの答えは否である。「百姓」とは、本来「農民」、「山民」、「漁民」、「職人」、「商人」など、様々な仕事を生業とする人々全てを指す言葉で、江戸時代までは、これらを同時にこなす「百姓」が地方都市の経済活動を支えていた。さらに船に乗り込み沿海州と交易していた事実も明らかになっていく。「百姓=農民」の思い込みは捨てようではないか。(芹澤比呂也)


網野 善彦
講談社
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