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農業経営者ルポ「この人この経営」

ユリの花形に写す夢

 新神戸駅からトンネルを抜け車で30分、六甲山系の北、なだらかな山並みにかこまれた小さな盆地、淡河(おうご、神戸市北区)は登録品種名「神戸新鉄砲ユリ」の産地として知られている。
 新神戸駅からトンネルを抜け車で30分、六甲山系の北、なだらかな山並みにかこまれた小さな盆地、淡河(おうご、神戸市北区)は登録品種名「神戸新鉄砲ユリ」の産地として知られている。そのなかでも有数の生産農家で「坂本鉄砲ユリ」の独自ブランドで出荷している坂本さんを訪ねた。

 祖父の康一さん、そして父の勝さんから受け継いだ家業をになう若い経営者は勝敏さん。坂本さんには数年前、農業史や農業問題を考える研究会で一度お会いしたことがあった。御自身の営農をお話しいただき、ああなるほど、それはそうだ、と何度も感じ入ったことをよく憶えている。


3トンのパワーショベルがまず目についた


 どこかの工事業者が置いているのか、しかし最近に使った形跡はないな、などと思っている私の顔を見ていた勝敏さん、「これ、うちの機械です。温室を建てたとき柱を立てるのに、父が中古を買ってきました」。自分たちでできることは、とことん自前でする。温室内の設備も全部自作である。その温室の向こうでは倉庫を建てているところで、底を抜いた1斗缶を型枠にしてコンクリートが打たれており、柱の基礎ができていた。中古で済ませられるなら中古で済ます。温室を作った時も、どこかで解体するという話を聞いて、譲ってもらった建材を使った。

 バラの温室が3棟あるが、いずれも天窓がついていない。側窓をあけて換気するが、窓の内側にはビニールのカーテンがあり空気は上へ導かれ、バラに直接あたらないようになっている。硫黄の燻蒸器は手製である。「これだけの数、揃えようとしたらいくらになります?」。空き缶の中にレフランプを仕掛け、その上にステンレスの灰皿を載せただけのものである。

 ユリの畑は7反ほどあり、定植には1条植えの移植機を3年前から導入している。試作機を持ち込んでもらって検討し、植付けのピッチを10cmに改造したものである。6日に一度はせねばならない消毒のため、ラジコンヘリでの散布も検討したが、ブームスプレイヤーを導入することにしたという。

 トラクタは3台、1台はキャビン付きの60馬力でいずれも共同所有である。共同所有の相手はまちまちで、それも1対1の共同だけではなく、1対2、3、4とこれもまちまちである。「どの機械がどこと共同所有しているか、わからんようになりますわ」。もちろん混乱することもないのであろうが、とにかく屈託がない。

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