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【女だからの経営論】
どうせやるなら半端はイヤ
- 三好かやの
- 第34回 1999年12月01日
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どうせやるなら半端はイヤ
埼玉県深谷市でネギ栽培を手掛ける馬場久江さんを訪ねた。身長153センチ。パッと見、小柄な女性である。
「今は48キロぐらいあるんだけど、結婚前は45キロあるかないか。とても華奢だったんです。だから農家に嫁ぐと決まった時、親に『よせ』といわれました」
結婚前は農協に勤めていた久江さんを気づかい、当時の専務が「農作業を手伝うのがイヤなら、ずっと農協に勤めていてもいいよ」とさえいってくれたそうだ。それでも久江さんは、
「まだ何もやっていないのに、イヤだなんていえない。たまたま結婚する相手が農家なんだから、やらなくてどうする。どうせやるなら中途半端はイヤだから、私、農協辞めますって(笑)」
周囲の心配をよそに、いざ始めてみると、根気のいる作業ではあるけれど、重量の軽いネギということもあり、意外に「重労働」とは感じなかった。
そんな馬場さん夫妻も、めでたく今年結婚25周年。銀婚式を迎える。長男の一彦さんは24歳。北海道の酪農学園大学で農業経済を学び、今年から本格的に就農することになった。「これで本格的に規模拡大できる」と、夫の茂さんも嬉しそうに張り切っている。
お母さん、楽しいかい?
そんな久江さんにとって忘れられない一彦さんの一言がある。まだ、彼が中学1年生だった頃、何気なく「一彦、農家継ぐ?」と尋ねてみた。すると、
「お母さん、今楽しいかい? お母さんが楽しいなら、跡を継ぐ」
といったそうだ。その言葉に久江さんはガーン! 二の句が継げなかった。当時は、農家がイヤとは思っていなかったにせよ「楽しい」という感覚も持てずにいたからだ。
一彦さんにしてみれば、父親だけでなく、母親も「楽しく」やっていなければこの仕事は「本物」じゃないと思ったのだろう。何も言わなくたって、子どもはちゃんとその辺のところは感じている。なんと鋭い一言だろう。
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