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【祈りの大地】
エビス様の総本社は稲作の神
- 斎藤吉久
- 第7回 1999年12月01日
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十二月上旬、島根半島の東端に鎮まる美保神社(島根県美保関町)で「国譲り」神話に由来する有名な諸手船(もろたぶね)神事がおこなわれる。神社の前の小さな港で、丸太をくり貫いた諸手船二隻が水をかけあい、競漕するのだ。
美保神社は、事代主神(ことしろぬしのかみ)=恵比須神を祀ることから、全国のエビス様の総本社として知られる。エビス様といえば釣竿をかつぎ、大きな鯛を抱えたエビス顔の神様をだれしも思い浮かべるだろう。一般的には「海上安全神」「豊漁守護神」と信じられ、漁民たちの篤い信仰を集める美保神社だが、宮司の横山直材さんによれば、意外にも「古代から稲作の神でもあった」という。神社にはもう一柱の祭神・三穂津姫命(みほつひめのみこと)が雲に乗って高天原から稲穂をもたらしたという伝承がある。
神社ではかつて「種替(たねかえ)神事」という神事がおこなわれていた。研究書などにも見当たらない幻の神事だが、日本文化をこよなく愛し、日本に帰化した小泉八雲が『知られざる日本の面影』でふれている。
八雲が島根県松江市に移り住んだのは明治二十三年の夏である。姫路から人力車に乗り、山を越え、津山を経て、山陰街道に出た八雲は「田んぼのいたるところに何か奇妙なもの」を見たという。それは榊の三ツ葉を頭にして竹竿にはさんだ美保神社の神札(おふだ)であった。「まるで青々とした野面に点々と白い花でも咲いているようだった」と表現されている。
美保神社は、事代主神(ことしろぬしのかみ)=恵比須神を祀ることから、全国のエビス様の総本社として知られる。エビス様といえば釣竿をかつぎ、大きな鯛を抱えたエビス顔の神様をだれしも思い浮かべるだろう。一般的には「海上安全神」「豊漁守護神」と信じられ、漁民たちの篤い信仰を集める美保神社だが、宮司の横山直材さんによれば、意外にも「古代から稲作の神でもあった」という。神社にはもう一柱の祭神・三穂津姫命(みほつひめのみこと)が雲に乗って高天原から稲穂をもたらしたという伝承がある。
神社ではかつて「種替(たねかえ)神事」という神事がおこなわれていた。研究書などにも見当たらない幻の神事だが、日本文化をこよなく愛し、日本に帰化した小泉八雲が『知られざる日本の面影』でふれている。
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