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生き物を観察する少年の心が生きるヒントに
チョウをあしらった美しい装丁に惹かれて、本書を手にした。人間だって生き物なのだが、なぜ他の生き物とは区別をしたがるのか。昆虫を観察していると、日常の雑事や俗世の損得、人間関係の感情をふと忘れていることに気づくことがある。一体何をしようとして、どこに向かって動いているのかなど、ついつい夢中になってしまうのだ。
著者は動物行動学を国内に立ち上げ、チョウを対象になぜその行動をするのかという問いかけを続けた研究者である。本書には生き物の話題とともに、敏感に感じ取った人間の生き方についても言葉が綴られている。さらに、人間の手が加わった自然はすでに本当の自然ではないという認識で、科学はコントロールであると科学者自身が示す指摘は鋭い。
自分で観察するよりは、流れる情報からの耳学問が増え、知識先行の窮屈な思考に陥りやすくなっている昨今。2009年に他界した生物学者が残したメッセージは、大人にも子供にも生きること面白さ、人間や生き物に触れてワクワクする心の持ち方へのヒントになるだろう。 (加藤祐子)
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