ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

BOOK REVIEW

貧農史観を見直す

    • 無料会員
    • ゴールド
    • 雑誌購読
    • プラチナ
貧農史観を見直す (講談社現代新書)

著者:佐藤常雄、大石慎三郎
定価:693円(税込)
 出版社:講談社現代新書


江戸時代の農民の実像とは?

かつて、教科書会社に勤務していた頃のこと。「新しい歴史教科書をつくる会」という愛国思想を追求したグループが発行した教科書の普及を阻止するため、私は反対運動をしていた。誤解を恐れず申し上げると、そのグループが主張する江戸時代の農民観についてだけは、現在、共感している部分がある。それは「貧農史観」との決別というテーマである。

年貢の取り立てに追われるだけの貧しい農民…「貧農史観」とも言うべき一般常識は、歴史学の枠組みでは、既に過去のものとなっているのである。

本書にも、その成果が現れている。特に最終章で、当時の農民の知的水準の高さについて江戸時代に登場した「農書」の存在を引き合いに論を展開する部分は熟読・必見である。「農書」とは、近代の農業技術の礎となった日本最古の農業技術指南書のこと。これらは、専門家ばかりでなく市井の農民に手によって執筆・編纂されたものもあるというのだ。今後、江戸時代の農民の文化的素養の豊かさや、史料の芸術的な価値についても評価が高まるだろう。(芹澤比呂也)


貧農史観を見直す (講談社現代新書)
佐藤 常雄 大石 慎三郎
講談社
売り上げランキング: 130376

関連記事

powered by weblio