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農業経営者ルポ「この人この経営」

信頼が土台を作り、土台が経営者を育む

水田基盤整備


 当時、養豚と共に、稲作も経営の支柱であった。桜井さんは養豚に専念し本腰を入れていこうと決断した。水田は誰かに預けてしまってもいいと。

 しかし、印旛沼に注ぐ新川周辺は、小さな区画ばかりの田んぼで作業も困難なものばかりだった。桜井さんの田んぼだけではなかった。狭い田んぼや使いにくい形状、飛び地や濯漑・排水も作業しにくいものであった。

 この様な田んぼでは誰も借りてくれない。むしろ、周りの稲作農家もこの様な田んぼでは誰も積極的に水田を借りていこうとは思わないだろう。

 そんな時、水田基盤整備事業の話が持ち上がった。水田を整備し、稲作経営の土台を作り直そうというものだ。

 区画を作り直し、用排水施設を整備し、飛び地になっている所有地を換地しあってひとところにまとめる。

 しかし、稲作農家のそれぞれの思いは複雑であった。コメ政策の変容。生産環境の変化。生産額に対して膨大な工事負担金。先祖代々の田んぼを誰かに好きなようにされてしまう不安。自家の後継者の不安。…不安要素だらけの中では、水田基盤整備事業への参加・合意に対しても不安で一杯になるのは無理もない。

 この整備地区には209戸農家、合計60haの水田があった。整備への地主全員の合意と調整が事業の前提となる。

 桜井さんは仲間達と農家の間を奔走し、整備の推進を図った。

 しかし、合意は簡単にできるものではない。実際に工事が始めれるようになるまでに9年の歳月がかかった。これは桜井さんの地域だけの問題ではないのだ。

 桜井さんは語る。「お互いの信頼関係を作ることでまとまったのです」

 全体の利益を押しつけるのではなく、「一緒にやっていきましょう」という関係を作っていったのだ。

 「だめになった時は俺が引き受ける。同じ仲間だもの。そのかわり俺がだめになったらおめえに頼むよ」という関係だという。地域のことを考え、互いの良い部分を活かし合い、協力しあうことを説く桜井さんが勧めるんだから工事にも協力しよう。そう言ってもらえる関係だ。

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