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もう一つが販売・流通の課題だ。
ヤギ乳のマーケットは現在、存在しないに等しい。それは、マーケットとしての流通が確立されていないからだ。生乳をビン詰めにする工場は牛乳が主体だ。数量の少ないヤギのミルクはどうしても後回しにされる。
用途が限られるヤギミルクは大量流通の流れの中には簡単には馴染まない。店舗でもヤギのミルク、チーズのコーナーはまだまだ少ない。
川徳牧場も同様だ。
「まだ数力所しかないヤギ酪牧場ですから…」
「でも、販売に関してはまだまだこれからです…」
牛乳は生産から加工、流通、販売の経路も、販路も確立されている。
「牛乳のパッキングラインの隙間に、お願いするようにして入れてもらっています」
「もう少し販売量が増えるのであれば、飼養頭数も増やして、ちゃんとラインを借りることもできるのですが…」
販売量と生産体制。鶏と卵の関係で膠着してしまう。
たとえば消費者購入グループや、アトピーで悩む方々がグループとなって購入のルートを確立できると、かなりのコストダウンができ、生産も安心して増やすことができるのだが…。
次の課題は、ヤギのミルクの普及と利用の開拓だ。
日本ではヤギ乳やヤギ肉の利用は歴史が浅い。いや、皆無と言っていいかもしれない。
しかし、牛乳にはアレルゲンがあるがヤギのミルクにはない。また、ヤギのミルクには脂質の消化・吸収に重要な役割を果たすアミノ酸の一種、タウリンが牛乳の20倍あると言われている。さらに、発ガン抑制因子、体脂肪減少因子として注目されている共役リノール酸も多く含まれており、近年、注目されているのだ。
ヨーロッパでは「ヤギ乳のチーズ」も一つのジャンルとなっている。欧米では健康食品としてヤギ乳やその加工品が立派に通用している。
ヤギのミルクが末梢組織での血糖の利用性を高めることで、血糖値を低下させる効果があることも報告されている。
「チーズは今、研究中なんです」
ヨーロッパから輸入されるチーズを購入して、いろいろと研究している。
「肉も、おいしいんですけどねえ~」と川村さんは笑う。
ヤギ肉独特の臭いは、雄にだけあると言われている。
若齢のヤギではその臭いは緩和され、去勢された雄ヤギではその臭いが出ないとの研究もある。
屠殺時に雄の皮膚の芳香腺を適切に衛生的に除去し、枝肉を汚染しなければヤギ臭の問題はなくなると言われている。
「ペットにも必要とされているのです」と苦笑いの川村さん。
ペットフードにも、ヤギのミルクは重宝されているらしい。自然食ペットフードの店のいくつかがヤギのミルクを求めてきている。やはり牛乳アレルギーがあるペット(子犬や子猫)にはヤギのミルクがいいのだという。
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