ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

作物別経営研究

サツマイモ ~良質・多収のためのサツマイモ作りとは?~

【非病原性フザリウム菌製剤とつる割病防除効果】

 当研究所では、非病原性菌を用いたサツマイモつる割病防除法の実用化を図るために、農家の方々が手軽に扱うことができ、防除効果の安定した製剤の開発を目指して研究を行ってきた。その結果、菌を生きたまま長期間保存でき、誰でも簡単に取り扱うことができる製剤の開発に成功した。本製剤は、鉱物の一種「ゼオライト」に非病原性菌の胞子状菌体を吸着させて乾燥した粒状の製剤である(写真2参照)。常温保存も可能であるが、夏期の高温時には生残菌数が低下する場合もあるので、冷蔵保存が望ましい。製剤を5℃の冷蔵庫で保存した場合、300日を経過しても生残菌数は低下せず、つる割病に対して高い防除効果が維持されている。

 本製剤は10~500倍に水で希釈し、サツマイモ苗の切り口をI晩浸漬した後、翌日定植するだけであり、慣行防除薬剤のベノミル剤を用いた苗消毒法と全く同じである。本製剤は水を加えて撹拌すると、吸着剤である「ゼオライト」は水底に沈むが、菌は容易に水中に懸濁するので希釈しても均一な菌量を確保できる。また、一度作成した菌液は冷暗所で保存し、2~3日中であれば再利用も可能である。7年間にわたる農家での試験結果を下表に示した。非病原性フザリウム菌の効果はベノミル剤に比較してやや劣るものの、安定した実用的なつる割病防除効果が得られている。

 病害防除のために同一の化学合成農薬を使用し続けると、病原菌がその農薬に対して耐性をもち、農薬が効かなくなる(薬剤耐性菌)ことがある。前に述べたように、本製剤による病害防除効果は、植物体由来の抵抗性に基づくものであり、薬剤耐性菌の出現の危険性がない。元菌株は、20年近く保存して使用し続けているが、菌自体の変異は認められず非常に安定しており、高い病害防除効果を維持している。また、本菌は、サツマイモはもとより、他作物(キュウリ、キャベツ、ダイコン、トマト、ダイズ、ストック、カーネーション、アスター等)に対しても全く病原性がない。さらに、菌を土壌中に混和しても自然に菌密度が減少するので環境は汚染されず、極めて安全で実用的と言える。


【非病原性フザリウム菌製剤の今後の展望】

 茨城県は非病原性フザリウム菌製剤を「生物農薬」として一般に使用できるようにするため、民間企業との共同研究を実施し、来年度には「生物農薬」として農薬登録される見込みである。しかし、製剤の価格設定等の最終的な作業も残されており、市販されるまでには、まだ若干の時間が必要である。

 これまで農作物の病害虫防除は、化学合成農薬に依存してきたため、生産環境の悪化をまねき、湖沼や地下水などの環境に対する負荷も懸念されており、消費者・需要者からは化学合成農薬の使用を控えた安全な農産物の生産・流通が切望されている。

 平成4年に農林水産省で策定された「新しい食糧・農業・農村政策の方向」でも環境保全型農業(環境への負荷軽減に配慮した持続的な農業)の推進が今後の農政の重要な課題として位置づけられている。このような情勢のなかで害虫防除のための天敵(捕食天敵や昆虫病原性微生物)および病害防除のための措抗微生物製剤等の各種生物農薬が開発されてきており、非病原性フザリウム菌製剤も環境保全型防除技術の一端を担う素材になりうるものと考えている。

 本製剤はサツマイモつる割病以外に、ホウレンソウ萎凋病やトマト萎凋病、ダイズ萎凋病、ストック萎凋病等の野菜や花卉の土壌病害(フザリウム菌やバーティシリウム菌による導管病)に対して防除効果が確認されている。ただし、いずれもサツマイモつる割病ほど顕著な防除効果は得られていない。今後、本製剤を他作物の病害に対して適用拡大を図るためには、太陽熱土壌消毒等の物理的防除法あるいは耐病性品種の利用や移植栽培等の耕種的防除法と組み合わせて、対象とする作物に応じた総合的な防除体系を構築する必要がある。


関連記事

powered by weblio