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江刺の稲

旬を冷凍する和郷園の取り組み

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第89回 2003年07月01日

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さる6月6日、千葉県山田町である野菜冷凍工場の竣工式が行われた。ホウレンソウ、コマツナ等の軟弱野菜の冷凍工場である。それを作ったのは、千葉県の若手農業経営者たちが集う和郷園(1999年11月号「農業経営者ルポ」他参照)。  
 和郷園は1991年に山田町の木内博一氏を中心にして千葉県北東部の5人の新世代農業経営者が集まって始めた産直団体である。その後の和郷園は、20代30代の若い経営者たちに限って組合員を集め、現在では50農場以上の出荷者を束ねる組織になっている。単に供給する野菜の品質の高さだけでなく、食品や農産物に対する“信用不安”をもたらした様々な事件が発生する以前から、自らの“供給者責任”を自覚し、供給者責任を果たし得るシステム開発に自ら取り組んできた。その信頼性と情報公開への努力等が評価され、今では生協や量販、外食業者その他に幅広い顧客を持つに至っている。

 そんな和郷園による冷凍工場の竣工式には、様々な業界から代表者や幹部がお祝いに駆けつけた。

 彼らの冷凍工場設立に多くの関係者が注目するのは、農産物の市場開発に新しいテーマを提供するものでもあるからだ。

 冷凍野菜工場といえば、中国等の産地で、生産コストの安さを前提にした開発輸入の冷凍野菜を想像する人が多いだろう。そして、多くの農業関係者はそれが日本農業を圧迫すると怯える。ところが木内氏とその仲間たちは、そうした冷凍野菜技術の進化を国内農産物の魅力を消費者に伝える手段として活かそうと考えたのだ。

 和郷園が出荷する旬のホウレンソウやコマツナへの評価は高い。しかし、それを出荷できる期間は限られる。出荷時期を広げるためには無理な生産技術の採用も避けられない。それ以上に、旬こそ一番野菜は美味しいのであり、最高の品物を低コストで健康に育てることのできる時期なのである。であれば、和郷園のもっとも美味しい旬の野菜をそのまま冷凍して、一年を通してお客さんに提供できる条件を作ること。それが和郷園の冷凍工場設立への動機である。

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