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特集

事業計画書は夢を伝える手段!

支援者予備軍から信頼を勝ち得る手段として

 最後に、農場を取り巻く外部で大きな変化を起こせるのも、事業計画書の力である。事業への思いが強く大きいほど、農場外の力が必要になってくる。売り先、仕入先、エンドユーザー、金融機関、投資家、行政機関、マスコミ、その他無数にいるかもしれない支援者予備軍だ。

 金融機関でいえば、短期計画すら示せない事業者に、金を貸すはずもない。担保があれば済むかもしれないが、その考え方自体こそ計画性がなく、リスクの高い経営選択であり、担保の切れ目が縁の切れ目になる。大切な仕入先や売り先と常日頃から事業計画を共有することは重要なのだ。

 思い起こしてほしい。人は自分の思いを知らせてくれると、応援したい気持ちになる性質を持っている。しかも、しっかりした形でその思いや計画を伝えられれば、それだけの形になって返ってきやすい。同じことがマスコミでもいえる。信頼関係を築き、経営者自ら将来計画をしっかり語ることで、記事やニュースという形で返ってくるのだ。結果、多くの人に自分の事業目的を伝えることができる。経営者の思いが伝われば、一般消費者のファンづくりにも役立つ。

 事業性を見抜いた投資家や、事業を一緒にしたいというパートナーも登場するかもしれない。すべては、経営者の思いを形にした事業計画書から始まる。自ら投資家やパートナーを探しにいくときには当然役立つ。計画書なしで第三者を納得させることはできない。

 さらに言えば、事業の拡大だけに用を足すのが計画書ではない。苦境のときにもその真価を発揮するのだ。

 赤字の際に資金融通や増資を依頼したとしよう。取引先から「苦しいのはわかった。じゃあ、どうやったらうまくいく目論見だったのか。それのどこで間違ったのか。これからどうやってうまくいくのか」という質問があるはずだ。

 よほどの信頼関係がない限り、この問いに答えられないまま支援を得られることは考えられない。計画書さえ存在しないとすれば、将来の見通しについて誰も信じてくれない。うまくいっていないとしても、計画を立てていたこと自体で信頼性が高まる。要は真意が伝えられる根拠になる。たとえお金を出してくれなくても、有形無形の支援を申し出てくれることもある。

「もし事業計画書がなかったら、潰れていたかもしれない。いままでは資金援助を求める範囲は親類縁者などに限られていた。計画書があったからこそ、思い切って取引先に説明できて助けられた。今後はその精度を上げていく」(千葉県・野菜生産法人)

 たかが事業計画書、されど事業計画書。農場を成長、発展に導くための、はたまた衰退、倒産を防ぐための必須書類であることは間違いない。

(浅川芳裕)

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