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編集長インタビュー

作り手と食べ手が相互に感謝する善循環を生み出していきたい

「日本リサイクル運動市民の会」が行なっていた有機・低農薬野菜の宅配事業を原点とする、らでぃっしゅぼーや(株)、昨年にはジャスダックに上場。会員数約10万人、売上高212億円を超える企業に成長した。市民運動から出発したこともあり、扱う農産物や取引する生産者も運動色が強かったが、今は顧客志向にシフトし、成長を遂げつつある。就任から10年目を迎えた緒方大助社長にこれまでの歩み、そしてこれからの目標を聞いた。
有機・無農薬イデオロギーから解放されて

昆吉則(本誌編集長) 本誌ではかつて反農薬運動や有機農業推進運動に対して批判的なスタンスをとっていました。商売のやり方としてはまずいのではないかと思ったんですね。お客様の不安感、不信感を裏返しにしたマーケティングでしかなく、つまずきの原因になるわけですから。ですから、御社の前身の組織を批判したこともありました。しかし、御社が企業として成長していく過程で、農業あるいは農産物に対する考え方も変わってきたそうですね。

緒方大助(らでぃっしゅぼーや(株)代表取締役社長) おっしゃる通りで、だいぶ変わったと思います。私が社長に就任したのは2000年でしたが、当時産地を回りましたら、ある生産者からこんなことを言われたんです。「社長、有機農業は芸術なんです」と。頭の中にはクエスチョンマークが6つぐらい並びましたよ。

昆 一体何を言っているんだろう、と(笑)。どう返しましたか?

緒方 当然ですが、それは違うんじゃないですかと反論しました。「芸術は、自分が心から作りたいものを作るという行為であるんだから、そこに代償を求めないし、収入は赤貧を洗うがごとくでも、文句が出てこないはずです。しかし、あなた方は商売として農業を営んでいるじゃないか、そういう言葉を使うのはやめた方がいい」と。

昆 でも分からない頑固な農家もいたと思いますが。

緒方 そうですね。作物を自慢するのではなく、農法を誇らしげに語る生産者もいましたね。そういう方には「あなたには息子さんがいますが、どう褒められたいんですか?『息子さんに対する教育方針は素晴らしいですね』ですか? それとも『おたくの息子さんは立派ですね』ですか」と、問いかけました。

 やっぱり、みなさん息子さんそのものを褒めていただくのがうれしいわけです。そして「そうですよね。であれば農産物も同じで、作り方ではなく、農産物そのものが美味しいかどうかで勝負しましょうよ。売れなければどんなにこの農法が素晴らしくても継続していくことができませんよ」と、伝えてきました。

 こういったことが理解されたからか、らでぃっしゅぼーやの「スター生産者」の資質が、今と昔とでは変わってしまいましたね。昔は日比谷公園の集会でスピーチできる運動家がスターでした。でも、今は違います。よりよい品物を効率よく作ることができる生産者がスターです。

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