ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

農家の給与

【規模別では1人が1位!】

 農場・法人の規模(専従人数)で年収の差は見られるか。

 1人が1位(437万円)になっているのは予想通りの結果か。2人(374万円)、3人(265万円)になると下降するが、4から5人で400万円を改めて突破する。2,3人は家族経営の範囲で、4人を超えると一気に事業拡大し、規模の経済が働いているということか。

 6~9人以上になると再度、下降線をたどり、30人を突破すると若干上昇する結果となった。

 最大規模の50人以上(役員含む)では平均年収が269万円。他産業と比べても、中小企業として立派な給与水準といえるだろう。

 初任給水準(中途採用含む)はどうか。ハローページのホームページに掲載されている農業業種の求人広告655件から編集部が集計した。全国平均は、正社員が19万円、社員外は16万円となった。中小企業平均と比べても遜色ない。都道府県別にみると、上位を占めるのが東京都(1位・27万円)、神奈川県(3位・24万円)、愛知県(4位・23万円)など、生活費の高い大都市圏だ。最下位は高知県の7万円で、次いで徳島県の13万円だった。

 業種別には、園芸分野が正社員(22万円)・非正社員(18万円)の双方で、初任給平均のトップとなった。続く畜産、耕種、サービス業では正社員17〜18万円、非正社員14〜15万円と優位な差をみられない。

 年収を増やす見通しはあるか。個々の農場に聞いてみた。「収入は今後も確実に増える(施設園芸/千葉県・46歳)」と応えた農場主は、高単価のお中元需要にしっかり応えられれば利益率が向上し、給与に還元できるという。現状でも市場を通さず全量直販で、売り先である宅配、小売、ホテルの比率を付加価値に応じて変えていく戦略だ。


【年収アップの秘訣は経営者の心構えにあり】

 宮崎県の茶生産法人社長は「売上よりコスト削減が給与アップへの近道」と強調する。「利益が出せる価格で売れるように日々、ムダなコストをカットしている。そうすることで社員の給与も売上に対する成果主義で上げられる」と根拠を明かす。

 収入を上げていくモチベーションを「2年後に息子が入ってくるから(露地野菜/新潟県・51歳)」と応えた人もいた。「今のうちに面積を増やして、家族団結して所得向上に励む」と意気揚々だ。

 「成果が上がらない限り昇給しない(果樹/長野県・48歳)」―みもふたもない正論だが、この経営者は一貫して昇給を続けている。「どんな状況でも上がる環境を作ってやるのが俺の仕事」と自らが成果主義を背負っている。


【依存心が年収を下げる】

 下がると答えたのは2人だけで、理由も共通している。

 「このままでは減少する。農政が専業農家の利益を確保できる方向に向かうべき(畑作/北海道・62歳)」

 「補助金収入が大半なのに、役員5人の給与は皆1000万円以上。国の政策が変われば、自分ら若手幹部の給与にしわ寄せが必ずくる。危機感はあるが、どうしていいかわからない(コメ/愛知県・29歳)」

 国への依存心から脱却しない限り年収アップは望むべくもない。

 「妻に払っている年2回のボーナスを増やしてやりたい。そのために今の不安定な市場7割、安定した直売3割の比率を逆転させたい(施設園芸/山形県・43歳)」とは愛妻農家の弁。

 「もっともらいたい」より「もっと払ってやりたい」が収入アップの本質かもしれない。


【農業は特殊ではない】

 こうして年収データとその背景を突き詰めると、何も農業は特殊な産業ではないことがわかる。他産業と比較しても年収が著しく低いわけではなく、「高いところは高い」「低いところはそれなりの理由がある」という極めてシンプルな結論に達する。

関連記事

powered by weblio