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農・業界

(有)深沢きのこセンター(栃木県茂木町)、養育里親で被虐待児受け入れ

  • 編集部
  • 2004年04月01日
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「何かを作りだす経験は、子供たちに生きることの根本を気づかせるのです」――。栃木県茂木町でナメコを栽培する(有)深沢きのこセンターの上野隆さんはそう語って子供たちに視線を送る。 上野家では小学生の男女3人がいわゆる里子として暮らし、農業に接しながら、学校に通っている。近年よく知られるようになった「ネグレクト(養育放棄)」という虐待を親から受け、行き場を失うと同時に心に深い傷を負った子供たちだ。

農業がもつ「社会的機能」とは

「何かを作りだす経験は、子供たちに生きることの根本を気づかせるのです」――。栃木県茂木町でナメコを栽培する(有)深沢きのこセンターの上野隆さんはそう語って子供たちに視線を送る。 上野家では小学生の男女3人がいわゆる里子として暮らし、農業に接しながら、学校に通っている。近年よく知られるようになった「ネグレクト(養育放棄)」という虐待を親から受け、行き場を失うと同時に心に深い傷を負った子供たちだ。

 10年前、上野さんは県の里親連合会に登録し、里子が義務教育か高校を終えるまで育てる養育里親になった。だが、虐待を受けた子供たちは、身勝手な親から離れることができても、「育ちが悪い」という偏見から、社会の冷たい壁に直面する。里親家庭が周囲の理解を得られないことも少なくない。

「他の父兄の不安を気にするあまり、本来一番に子供の教育について考えるべき学校の対応も消極的。問題を起こすのではないかと心配するばかりで、子供たちの将来を考える真剣さが伝わってこない」。上野さんは残念そうに語る。 里親としての苦労も絶えない。育児のできない親の元で生活してきたためか、里子たちは空腹が満たされ、布団で眠れることに満足してしまい、「我慢ができない子が多い」という。勉強や働くということに意味を感じない。仕事を1時間続けさせるのに4カ月かかることもある。

「私たちにできることは被害者に同情することだけではない。生きるために最低限必要なことを、きちんと叱って身につけさせる必要がある」。また、だからこそ、「受け入れる場が農家であることに大きな意味がある」と上野さんは訴える。農業には「生きるために作ること」を体験させ、自ら作り、売り、また良いものを作るという循環を感じさせる機能があるからだ。 養育里親の数は全国的に不足している。多くの農業経営者に、農業がもつ社会的機能として、この制度を知ってもらいたいと上野さんは願っている。【小山明子】

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