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【過剰の対策、欠乏の克服】
水田中干しと穂肥の関係
- 農業コンサルタント 関祐二
- 第62回 2009年08月01日
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イネの特性と水田環境
栄養源を引き出す土作り
日本の水田面積は最大時で約350万haありましたが、現在のイネの作付面積は200万ha以下に減っているようです。とはいえ、田舎の風景の主役といえば、やはり田んぼです。この田んぼが持つ優れたシステムについて、すでに理解されている読者もいるかと思いますが、今回はこの点を今一度確認していきます。
まず、田んぼで生育するイネの特徴から整理してみると、単子葉で湿性条件下で育ち、病害がつきにくい上に適応範囲の広い植物です。麦の栄養特性と比較してみるとその特性はよりはっきりと見えてきます。イネと麦の両方に窒素・リン酸・カリの3要素を十分に与えた場合と全く与えなかった場合の試験結果を比較すると、麦に3要素を全く与えなかった場合は30%ほどの収穫量しかなくなります。しかし、イネの場合は70%も収穫量があるのです。これほど歴然とした差が表れるのには、イネなら水田土壌、麦なら畑地土壌という生育環境の違いももちろん関係していますが、そもそも稲作の最低収量が高いというのは間違いありません。
イネが育つ環境は、土の上に水を張った状態になっている水田です。このような環境下では有機物がゆっくりとしか分解されず、有機態の成分が土に蓄積されていきます。田んぼに天然供給される成分も実に豊富で、水田10aあたりに年間1500t流入すると考えられている灌漑水には、多量の無機成分が含まれています。さらに、田水面に多数発生する浮き草や藻、植物プランクトンは土の腐植を増加させる働きもします。ここで問題になるのは、蓄積した有機物が必要な場面で分解し、無機化してイネの栄養源になるかどうかということです。その点、昔の人々は、土を乾かした後にはゆっくりと窒素が分解して溶け出してくることを、科学を知らなくても経験的に知っていたようです。肥料が手に入らなかった時代にも、水田の土からイネの養分をより有効に引きだすために様々な知恵が絞り出されていました。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
過剰の対策、欠乏の克服
「土壌診断」という言葉は農業界に浸透し、多くの人がその必要性を感じているものの、調査は専門機関に委ね、その処方に基づいた施肥を行なってきたのが現状だ。ここでは現場で農業者が主体となって行なう土壌調査と診断方法について紹介していく。
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