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いずれにしても、これまでの調査からは、土壌の物理的な特性から施肥が必要な土壌とさほど必要としない土壌があり、施肥を必要としない良好な土壌条件の圃場がかなり多く存在することがわかっている。
しかしながら、土壌の物理的条件が悪い圃場では、指導される施肥量でも足りないほど、作物の育ちは悪かったりする。土壌の物理的条件によって作物が必要とする肥料の量が違ってくるのだから、土壌の化学分析だけでは、この点がはっきりしないのだ。現状では施肥が必要な土壌か、さほど必要ない土壌なのかを分けることはできるが、最適な施肥量をはっきり示すことはできない。
さらに私は、追肥型の施肥体系を推奨しているため、最適な基肥量を把握することはなお難しい。無責任なようだが、現状では自ら試験を行なって調べるしかないのだ。
最適な施肥量を決める際に考えるべきポイント
そこで、バラツキを抑えるための施肥量を検討する際の考え方を述べておく。ここでは特に基肥の窒素量の話に絞る。その他の要素については土壌の化学分析結果に従って判断していただいて問題ないと思う。
考えるポイントは4つあるので、それぞれ説明を加えていこう。
1.追肥をできるか
これが最も重要なことである。肥料を精密に散布できるブロードキャスターの存在を知った時には、追肥のための機械だと思ったくらいである。追肥を行なえる機械体系、人員、時間等があれば、基肥はほとんど要らないといって良いだろう。特に窒素は、生育初期にはないほうが望ましく、追肥だけで与えていくほうがいい。基肥は窒素以外の土壌養分の過不足を調整する程度で十分である。
問題は追肥ができない、あまり追肥に頼ることができない場合である。基肥で栄養分を与えなければならないからだ。
2.どのタイプの基肥を選ぶか
窒素の供給を基肥で行なう必要がある場合、緩行性のものを選びたい。作物の生理を考えると、基肥を施した時点ですぐに効く即効性のものよりも適していると思う。緩行性のタイプであれば、それぞれの肥料の特徴を考えて選べばいいだろう。
この緩行性肥料の使い方については、勘違いをされている人が多いようだ。即効性のものと同じ成分量を施肥すると初期生育が劣るため、即効性の肥料と組み合わせることがある。これは明らかな間違いだ。
緩行性のものは作物が必要とする時期に養分が溶出するようにできている。地上部の初期生育が貧弱であっても、養分を吸収するための根を伸ばしている場合が多い。地上部の初期生育を旺盛にするという理由で、即効性の肥料を与えると、根の成長を抑制してしまうことになる。
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岡本信一 オカモトシンイチ
(有)アグゼス
代表取締役社長
1961年生まれ。日本大学文理学部心理学科卒業後、埼玉県、 北海道の農家にて農業研修。派米農業研修生として2年間アメ リカにて農業研修。種苗メーカー勤務後、1995年 農業コンサ ルタントとして独立。 1998年(有)アグセス設立代表取締役。農業 法人、農業関連メーカー、農産物流通企業、商社などの農業生 産のコンサルタントを国内外で行っている。講習会、研修会、現地 生産指導などは多数。無駄を省いたコスト削減を行ないつつ、効率の良い農業生産を目指している。 Blog:「あなたも農業コンサルタントになれる」 http://ameblo.jp/nougyoukonnsaru/
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