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新・農業経営者ルポ

単独で260haの畑作経営を回す北海道の一匹狼


徳保はいまの大規模経営に続く礎をつくった。上原によれば中標津町内で3本の指に入る経営面積を誇ったという。
地元の農業高校を卒業した上原は、周囲がこぞって海外研修に行くなか、父の下で営農に励んだ。
「酪農の多頭化経営が進んでいた。それで海外というわけだけど、行った人はほとんど農業をやめた。先に進みすぎちゃったのかな。順番が来るまで待たないと。自分ももし行っていたらつぶす原因になっていたかもしれない。父とはよくケンカもしたけど、それで良かったね」
そんな上原にも経営の危機が訪れる。

計画は大きく、240%

「農協に出荷せず、自分で売るようになってからとても苦労した。2~3年で蓄えもなくなったから。営業活動をしても全然売れなくて。ただ、そのうち集荷業者がたくさん集まるようになったけど、忙しいだけでさっぱり利益は出なかったね(笑)」
昨年は、ソバを150ha、生食・加工用ジャガイモを65ha(うち30haは採種)、生食用ニンジンを10haに作付けした。今年は本格的に生食用タマネギの生産も始める。
「イモ・タマ・ニンジンをとことん作ればこの経営が合っているかやがて見える。行き着くところまでやってみないと自分はわからない。計画は240%で立てる。そうすれば130%くらい達成できるし、利益も出る。100%とかの小さい考えじゃダメ。自分は農協の組合員だけど取引はゼロだから、100%自己責任という立場にある。だから、モノがあまり取れなかったときでも集荷業者に対して『ありません』とは言い訳できない。農家は半分博打みたいなところがあるけど、でかい計画を作ってあきらめないでやること。目先のカネのことも意識しない。それに尽きる」

補助事業の申請は自ら実施

主力品目のソバは、交付金と原料販売で4500万円ずつ、計9000万円の収入になる。他作物を含めた全収入は2億円、減価償却費は5000万円に上るという。
前述のグリメ社の2畦けん引式ポテトハーベスターとジョンディアの310馬力トラクターはどちらも平成24年度の補助事業で北海道紋別市の農機輸入商社、ナカザワアグリマシーンを通じて入手したものだ。費用総額は6360万3000円、自己負担額は3635万3000円だった。申請にあたっては自ら書類を作成して提出したという。
こう書くと所有機械は補助金絡みばかりなのではないかと勘ぐるかもしれないが、実際はそうではないようだ。農協との取引がなかったことで個人では申し込めないものだと認識し、結果的に補助金を使うという発想がなかったのだ。ところが、農協経由でなくても申請のための条件さえ満たしていれば個人でも可能だとわかると、こうして自ら対処するようになった。その一本目が12年3月に竣工した馬鈴薯貯蔵庫だ。もともと別の保冷庫で年明けの春まで管理、販売していたものの、出入りする業者から通年供給を求められると、貯蔵能力が870tのそれを新たに構えた。

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