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特集

水田農業の「当たり前の経営」 そのコメづくりは必要とされているか



滋賀県野洲市で水田190haを経営する(株)グリーンちゅうずは今年、多収性のハイブリッドライス「みつひかり」の作付面積を昨年実績の42.5haから50haにまで拡大する。
これは同社の水稲の作付面積130haの4割近くに相当する数字である。近年、外食業界を中心に値ごろ感のあるコメを求める実需者が増えてきているためだ。
経営の根幹には「マーケットインのモノづくり」という発想がある。

【黒字経営なのに新規需要米や加工米に手を出す必要はない】

2月初め、琵琶湖の東岸に広がる水田地帯の一角に立つグリーンちゅうずの事務所に、東海地方の稲作農家の一行が視察に訪れた。主な目的は、これから普及を強化する「みつひかり」について、全国に先駆けて作付けを広げてきた同社の体験談を聞くというものだった。

みつひかりは本誌でもたびたび紹介してきた通り、三井化学アグロ(株)が育成した品種で、10a当たりの収量が全国平均で12~13俵と、各地域の一般品種より3~5割多い。種子代は通常品種の7~8倍する。2014年には19県で産地品種銘柄に指定され、栽培面積は計1650haに及ぶ。
視察に訪れた農家が目を付けたのはみつひかりの多収性だ。飼料用米として生産すれば、10a当たりの収量が多いほど交付金が増えるので、満額の10万5000円をもらえる可能性が高い。主食用米の価格が暴落したことへの対応策として、JA全農は飼料用米の作付けを昨年実績の3倍の60万tに拡大する方針を打ち出している。それに沿った取り組みなのだろう。
対して、グリーンちゅうずは飼料用米を一切作っていない。みつひかりは、あくまでも主食用として栽培している。視察した農家からこれから飼料用米を作る意向について問われると、田中良隆代表は「その気はない、交付金申請の手続きが面倒だから」と言い切った。視察の一行が帰った後、こう答えた意図についてもう少し突っ込んでみた。
「だいたい新規需要米も加工用米も農政事務所に出す手続きが面倒。うちは黒字経営なのに、あえて手を出す必要はない。それに相手があってのコメづくりだと思っているから」
その答えはシンプルで、実需者があってのコメづくりというわけだ。交付金目当てでみつひかりを増産しようと思案する関係者はどう聞いただろうか。

【収益が見込めるなら種子代が高くてもつくる】

図1にグリーンちゅうずが14年度に作付けした品種の面積割合と生産量の割合を示す。主食用米が圧倒的に多いことがわかる。特に、外食業者からの要望も高まっているので、年々作付けを伸ばしてきているところだ。みつひかりも多くを大手外食チェーンに卸している。

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