ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

水田農業の「当たり前の経営」 そのコメづくりは必要とされているか



田中良隆 氏
(滋賀県野洲市)
(株)グリーンちゅうず
代表取締役
1991年12月に(有)グリーンちゅうずとして、7名の出資者と20haの契約面積で発足。94年に特定農業法人の認定を受け、01年に運営形態を株式会社に変更。現在、出資者は現在14人、契約面積は190haで、水稲のほか小麦、大豆、野菜を生産。

Case3
とことん低コストを追及し
企業的経営を目指す
(株)イカリファーム 

父親の世代までの常識のままでいいのか。農協との関係も、近隣の農業者との関係も今こそ変えていくべきなのではないか。イカリファームの経営は、商売としての当たり前を疑うことから始まり、「低コストで高品質なモノづくり」を求めている。

当たり前を疑うこと――。滋賀県野洲市で水田農業を経営する(株)イカリファーム取締役の井狩篤士さんにとっては、それが農業経営を実践するうえで肝心なことだ。
たとえば軽油は農協が販売する価格がすべてなのか。その疑問に対する一つの答えが、事務所やライスセンターなどが立ち並ぶ一角の露天に置いてある中古の3tローリー車である。
20万円ちょっとで手に入れたこのローリー車はイカリファームにとっての給油所である。毎回、燃料屋からローリー車1台分の軽油をまとめて買い取り、この中古ローリー車のタンクに充填してもらう。大口で買うことで、農協の販売価格と比べて1当たり約10円のコストダウンになっている。
これには余得がある。屋外に燃料タンクを設置する場合、消防法ではその周囲に防油堤を設けることが義務付けられている。井狩さんによれば、建築物でないローリー車ならその義務はない。敷地外に移動しないので、車のナンバーは外している。
さらにローリー車の近くには育苗ハウスがあり、その脇には家庭用の大型ビニールプールが2つ、満水状態で置かれている。これを育苗ハウスとパイプでつなぎ、育苗箱に自動で散水できる仕組みにしている。このプールは通販サイトで購入したもので、井狩さんは「プールではなく防火水槽を設置するとなれば、容量2000以下のクラスで10~20万円近くはする。でもこのプールなら1万円で済んでしまう。おまけに4700と防火水槽より多くの水を貯められる」と説明してくれた。

【コストダウンの始まりは自らの給料を上げるため】

「当たり前を疑うこと」を始めたのは、父親の経営に対する疑問や不満からだった。一言でいえば「どんぶり勘定だった」のだ。それゆえに経営状態は常に危うかったそうだ。井狩さんは滋賀県立大学を卒業後に実家で就農したものの、月給は15万円からさっぱり上がらない。加えてボーナスは出ない。この状態が3年続いた時、さすがに不満が募って父親に賃上げを要求した。しかし、返ってきたのはむしろ激怒だった。

関連記事

powered by weblio