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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第三章 貸借対照表から経営感覚を養おう(1)「資産の部」の眺め方と分析

今年は5年に一度の農業センサスの年である。もう皆さんも調査を終えている時期であろう。センサスとは、調査対象を隈なく調べる全数調査のことで、サンプル調査に比べて調査にも集計にも手間のかかる大規模な調査となる。調査結果から時代を読み解き、結営の現場に活かしたいものである。
そもそもセンサスの語源は、ケンソルという古代ローマの政務官職に由来する。この役人の職務は、国勢調査と風俗の引き締めであり、日本ではさながら、目付や監察官と訳されるだろうか。役目の一つに市民の人口調査があり、古代ローマでも5年ごとに行なっていたとされる。紀元前に誕生した古代ローマ帝国は、優れた国家体制を築いていたことが伺える。
我が国の農林業センサスは、「昭和4年農業調査」が始めである。FAO(国際連合食糧農業機関)の前身である万国農事協会が提唱する「1930年世界農業センサス」にならって実施された。46年には農家の人口調査を行ない、食糧管理や農地改革等の問題に対処するため、47年に臨時の農業センサスを実施した。このときに初めて「センサス」という名称が用いられたのである。
調査は本来、食糧不足や農地改革など農業に関わる諸問題に対応するために行なっていたが、いつのまにか基本的な農業構造を捉えることが主たる目的となってしまっている。現在では10年毎にFAOが「世界農業センサス」を実施し、我が国は5年毎に「農業センサス」を行ない、FAOに準じて目的を謳っているだけで、重点調査の項目は生産・就業構造の把握である。
農業界で貿易問題が話題となって約20年が経つ。この辺りで本来の目的である農業・貿易問題を解決するためのセンサスとなってほしいものである。より良い政策が実行されることを祈りつつも、我ら農業経営者の使命は自らの経営改善の糸口を見つけることである。
経営全体を見渡す財務諸表のなかでも、今回からは貸借対照表の見方を3回に分けて紹介していきたいと思う。表1に前回掲載した貸借対照表を示す。これを基に「資産の部」を眺めるところから始めたい。

資産の流動性と固定性は
投資と回収の繰り返し

一般に資産の中で、現金や預貯金など、すぐに活用できる資産を流動資産と呼ぶ。総資産に対して、この流動資産の比率が高いことを「流動性が高い」という。その逆を「流動性が低い」もしくは「固定性が高い」といい、土地や建物、構築物、機械器具、大家畜などの経営に投じられる固定資産の比率が、資産に対して比率が高いことを意味する。

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