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岡本信一の科学する農業

土壌の物理性・生物性の数値化も可能になる!


土壌の物理性の改善方法を挙げてみる。代表的なのは、機械による耕うん作業や有機物の投入などである。それに追加したいのが、作物の根の伸長である。
多くの方は、栽培を始めると土壌は固くなるというイメージを抱いていることだろう。ほとんどの場合、これは正しい認識である。その理由は明らかで、栽培前の段階で土壌を非常に柔らかくしているため、雨に打たれたり、土壌自身の重量がかかったりして、硬くなってしまうのだ。以前から書いているように土壌を過度に柔らかくする必要はない。
栽培中に土壌が柔らかくなるというと、疑問に持たれる方も多いと思うのだが、よく考えれば、栽培中に作物の根が張ることで土壌の構造が変わるのは、当然のことなのである。緑肥にしても、根の張り方次第では土壌を物理的に変える働きをする作物もあり、ますます活用できそうだ。

数値は目安、人間の目で
補うという姿勢が大事

しかし、土壌の化学分析ができるようになり、肥料を潤沢に施用できるようになったことで栽培環境は大きく変わった。物理性も簡単に測定できるようになり、数字で評価するようになれば、同様の進展が見られるかもしれない。さらに、微生物の測定も簡易にできるようになったことで、土壌の化学性、物理性、生物性を総合的に判断できるようになるのかもしれない。そういう時代にようやくたどり着いたのである。
この連載では、これからしばらくの間、土壌や土壌改良の新しい側面にスポットを当てて、話を進めていきたいと考えている。
ただ、過信してはならないのは、仮に土壌の化学性、物理性、生物性を総合的に判断できたとしても、土壌のすべてがわかるわけではない。土壌は、作物の育ち具合、土壌の中の微生物、養分などの状況に応じて常に変化をしている。まさに生きていると言っていい。残念ながら、そのような土壌を総合的に数値ですべて表すのは不可能である。
例えば、人間ドック等で我われも検査を受けるが、体内の健康状態のすべてがわかるわけではない。数値は目安に過ぎないのである。
しかし、その目安をどのように活かすのかが重要であり、数値でわからない部分は人間の観察で補うという姿勢はいつも必要である。とはいえ、今まで見えていなかった部分が数値化される意味は大きく、今後、土壌についての認識はさらに深くなるだろう。

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