ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第四章 貸借対照表で経営感覚を養おう(2)「資本」の眺め方と分析

間近に控える団塊世代の引退

M&A(エムアンドエー)とは、企業買収が巷を賑わすとき、必ず耳にする言葉だ。その意味は、企業の合併や買収である。企業が他企業を吸収合併などで取得しようとする際に、多くはその企業の株式を買収して子会社化する手段を用いる。事業拡張や市場参入、新規事業、ときには経営不振の企業の救済を目的として実施される。
大企業はM&Aを行なう際に、「国内外への競争力強化」「破綻企業の再生」などを、もっともらしい旗印に掲げる。しかし、中小企業ではどうだろうか。地方でも都会でも、後継者がいないために起こる事業継承のタイミングで、M&Aが行なわれる。事業の引継ぎ、もしくは継続がその目的となる。
戦後の起業家の多くは、団塊世代であり、当人には怒られるかもしれないが、引退はもう間近である。引退を契機に、工場や商店の廃業が進むことに手をこまねいていては、地方はますますその活気を失うであろう。廃業となれば、長いお付き合いの従業員にとっても、最悪の出来事となる。しかしながら、親族や社員から後継者を養成し、経営を継続することは、最も難しい課題である。
農業界でも同様だ。生産要素とされる土地と資本と労働を駆使して、今をいかに上手に経営していても、後継者がいない、育たないのであれば廃業が待っている。
廃業は農地や施設の価格に合わせて、売却額を買い手が支払えば成立する。一方の買い手は、過去の生産活動が生み出した生産手段のストックや農地、施設、機械等を手にする。経営資源が増し、生産活動の拡大と充実を図るチャンスとなるはずだが、労働力の問題などから経営を充実させる手段になるとは限らない。規模拡大により手のかかる作物は手放しがちになり、新たにトラクターを購入しても、反収は減少――。生産効率や生産性について伸び悩むケースも出てくる。このような状況が続けば、地方の基幹産業、農業は衰退の一途を辿ることとなる。
農業の経営資源を有効利用し、衰退を防ぐ方法の一つに、あえて新規参入者や一般企業との連携を挙げたい。それは政府が議論する農地取得や、農業生産法人の要件緩和の議論ではない。なぜなら私は、自己資本の蓄積を多く持ち、跡継ぎとなった我われの世代の既存経営者が、やり甲斐を感じつつ儲かる農業を実践して、「自己満足」を社会に見せつけることが王道であると考えているからだ。その結果として、国内農業への関心と理解が高まり、参入を考える人が増え、他産業からも企業が連携を求めて来るであろうと。
我われの農業経営を国民が魅力的に感じること。そして、生産活動に理解を示して、地方に人材と資本が集まること。これが地域活性の、糸口となるのでないかと希望しているのである。
現代の日本農業は、間違いなく成長産業である。補助金や助成金を活かさない手はない。こういった未来を実現するために何が必要なのか。農業経営者は経営感覚をより磨くことも、他産業や一般社会に向けて経営活動を通した情報を発信することも怠れない時代である。

関連記事

powered by weblio