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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第四章 貸借対照表で経営感覚を養おう(2)「資本」の眺め方と分析


いずれにしても、農業経営を継続するために、今回は農業経営の安定性に着目する。なかでも最も重要な「資本」を中心に、その見方を解説していこう。なお、表1に前回までと同じ貸借対照表を掲載しておく。

多くの農業生産法人の
自己資本比率が低い理由

自己資本比率を知らないという経営者はいない。経営の安定性を見るための、最も基本的な指標である。自己資本は、返済の必要のない資本で、反対に借入金(他人資本)は、返済しなければならない資本である。返済利息は、事業の損益に関係なく、コストとして財布から逃げていく。
図1に自己資本比率の捉え方を示した。貸借対照表の借方(左側)の「資産(総資本)」に占める、貸方(右側)の「資本(自己資本)」の割合である。まず、表1の事例で、自己資本比率を求めてみた。この経営では、9000万円の資産に対して、資本は4700万円なので、自己資本比率は52%となる。一般的には、「負債による投資を控えたほうが良い」と判断される数字である。
おわかりのように、この自己資本比率は高いほど健全な経営だ。ただし、100%に近い場合、健全ではあるが、他者分析では「積極性に欠ける」または「経営を新規に始めたばかりか、終わりを考えているのではないか」と判断されることもある。
健全な経営の目安となる数値は60%以上である。40%以下では一般的に負債対策を講じなければならないと判断され、放置しては借金で首が回らない経営となると指摘を受けるだろう。
自己資本の大きさに最も注意が必要な経営は、法人経営である。組織であれ個人であれ、農業界では、多くの法人経営の自己資本比率が極めて低い。普及指導員時代に20社ほどの農業法人の設立と運営を支援した経験からそう感じるのである。
低い理由は主に3つある。図2に事例ごとに示した。
1つ目は、出資金が1000万円以下であれば、設立時に新規事業者の消費税免税措置制度を受けることができたためである。法人の設立当初、2年間、支払う消費税を節税し、そのまま増資がなされてない場合だ。出資金が1000万円程度ではそう多くの資産を持てない。資産が増えていく場合は、同時に40%を目安に増資の策を練るべきである。
2つ目は、設立時に個人経営から法人へ引継ぐ固定資産を簿価で譲渡し、未払金で法人経営が取得している場合だ。評価が曖昧だとより複雑で、現物出資より税負担も少ないため、一般的に行なわれる方法である。この場合、会社に対する帳簿上の貸し付けであるからと、個人口座への返済が先送りにされる。すると、負債が固定化し、自己資本比率は極めて低いまま改善されなくなる。

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