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岡本信一の科学する農業

土壌の物理性から考えた「良い土壌」


昨今、話題の土壌の微生物にとっても、土壌が徐々に硬くなる土壌が好まれる。土壌の微生物は、微生物叢という形で多様な微生物が拮抗している状態で存在するのが、理想的である。
一般的に表層が柔らかく、耕盤層で急激に硬くなるという土壌だと、作土と耕盤層では全く微生物叢が異なり、作土層の中では条件に適した微生物が増殖するだろう。もし仮に、耕盤層がなければ、どのような微生物叢となるだろう。
土壌表面に近いところでは、好気性菌が多く、深く硬くなるにつれて土壌中の空気は少なくなり、嫌気性菌が多くなる。グラデーションのように徐々に嫌気性菌が増えてゆくという土壌の微生物叢になるだろう。
耕盤層があると、耕盤層内は嫌気性菌が多く、雨が降れば耕盤層の上に水がたまってしまい、たまり具合によっては嫌気性菌が大増殖することが容易に想像できる。しかし、耕盤層がなければ、水は浸透しやすく、過度な過湿にはなりにくいので嫌気性菌と好気性菌の拮抗状態が続くだろう。つまり、土壌中の微生物叢の多様性を確保しようすると、土壌が深くなるにつれて徐々に硬くなることが理想に近い土壌と言えるのではないだろうか。
さらに「究極の土壌」に言及してみよう。私は、作物を育てることで土壌が理想の状態に近づいていくというのが理想ではないかと考えている。作物の栽培を始めると、時間を経るにしたがって土壌は硬くなっていくと普通は考える。しかし、作物が十分に根を張れば、作物自身が都合の良い硬さの土壌をつくっていくのだ。緑肥作物を利用して既に実証されている方も多いだろう。さらに、ホウレンソウのような直根系の作物でも作物の成長に伴って、土壌は徐々に柔らかくなることがある。
このように土壌が基本的に良い状態であれば、作物を栽培しながら土壌を改善することができるのではないかと考えている。そうすれば、いわゆる土づくりの手間を最小限にすることが可能になるだろう。
作物をつくりながら土壌の物理性を改善する。これを実現できる基本的な土壌条件を整えることを意識してみてはどうだろうか。次号では、どうしたら理想的な土壌の硬さになるのかを述べていきたい。

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