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小麦の銅欠乏の症状と対策

小麦の銅欠乏の症状と対策 前編

1 はじめに

微量要素の問題、とくに銅欠乏のようなどこでも見られるわけではない問題については研究例も少なく、また実際に見たこともない人がその解説を書くことがある。なかには誤った情報が流れ、あるいは多量要素と同じ感覚で施肥などを勧める論調もある。これは極めて危険であり、現場に接してきた者としてその誤りを指摘し、またこれまで知られていない真実も伝えたいと思った。そして、“土地は子孫からの借り物”との考えから、祖先から引き継いだ形で子孫に渡す責任を自覚してこの問題を扱いたい。
ここで取り扱う銅は植物の重要な必須微量要素である。国内における銅欠乏の報告は岩手と北海道であるが、この欠乏は麦類、とくに小麦には決定的なダメージを与える。その被害は必須多量要素の窒素やリン、カリウムの欠乏とは比較にならないほどで、収穫皆無の状態になる。地球温暖化に伴い、小麦の栽培は国際的にも厳しくなる時代に入ってきている。銅欠乏の症状、あるいはその発生しやすい土壌はどのようなところに分布するのか、対策はどのようにすればいいのかといったことを写真やデータをもとに説明する。
農林統計を見ると、世界の小麦の生産量は4億5000万t程度である。コメの生産量は5億8000万t(注:コメは国際的に籾重で表示するため、この値より4~5%低い)で、小麦よりコメの生産がやや多い。ただ、この二大穀物は紛れもない世界の主食である。小麦の生産はそのうち、中国が27・6%を占め、米国の約2倍となる。日本は年間総生産が85万8000tほどで、世界総生産の0・2%に過ぎない。輸入量は520万~570万tで、国内生産は総消費量の15%と極めて頼りない有り様である。表1に世界の主要国の年間小麦生産量を、表2に同じようにコメのグラフを示した。他国での生産もあるが、それを省略すると、小麦とコメの合計はほぼ10億tに上る。世界の人口を70億人とすると、1人当たりの両穀物の消費量は約140kg(注:実際の値)になる。
日本人のコメの消費量は70kgを切っているが、小麦の消費量は32kgであるから、双方合わせても100kgである。1960年代の日本人のコメの消費量は120kgであったことからするとこの落ち込みには驚くが、そこには魚や肉、あるいは果物などの豊富な副食物の影響も大きい。労働構造も変わって肉体労働が減少し、カロリー摂取量そのものの減少もある。今後さらにコメの消費が減り、小麦の消費量は増大するであろう。その意味で小麦の生産はますます重要になってくる。

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