ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

裏読み農協改革


安倍総理の意向を先んじて、自民党農林族幹部とJA全中会長との間で協議が行なわれた結果、JA全中に関する規定を農協法から削除し、JA全中を経団連と同様の一般社団法人とする、地域農協はJA全中から独立した監査法人と一般の監査法人のいずれかの監査を選択できるようにする、都道府県の中央会は引き続き農協法で規定する、准組合員の事業規制については見送るという内容で、決着した。
全中監査を強制監査ではなくしたことで、以前よりも地域農協の自由度は増すだろう。しかし、JA全中の政治力は依然排除されない。JA全中は一般社団法人に移行するものの、農協法の付則で、JAグループの代表、総合調整機能を担うと位置づけることとした。また、都道府県の中央会はそのままであり、依然として強制的に賦課金を徴収できる。都道府県の中央会はJA全中の会員なので、都道府県の中央会が集めた賦課金は従来通り、JA全中に流れていく。
全農等の株式会社化は全農等の判断に任されることとなった。協同組合であり続けるメリットのほうが大きいので、全農等があえて株式会社化を選ぶとは思えない。
准組合員の事業規制は見せ球だった。地域農協や都道府県の組合からすれば、准組合員がいなくなれば、融資先に困ってしまう。准組合員の事業規制を提案した途端、彼らにとって、准組合員が維持できるのであれば、全中監査などどうでもよいという判断になったのだろう。
本来なら、JAは金融と生活物資の供給を行なう地域協同組合として残し、農業部門は、解散するか、新たに作られる農協に移管すべきだ。農協は、必要があれば、主業農家が自主的に設立するだろう。それが本来の協同組合である。
主業農家も零細な兼業・高齢農家も、同じく一票の決定権を持つため、少数の主業農家ではなく、農業をやっているとはいえない多数の兼業・高齢農家の意見が農協の意思決定に反映されてしまう。この一人一票制の改革や農協の地域協同組合化など、本質的な部分はまだ提案もされていない。これで農協改革を終わらせてはならない。

【“農政トライアングル”に
生じた亀裂】

農水省が推進する農協改革に、農協は、農水省の方針の変節を激しく指摘する等、農水省と全面対決の様相を呈した。農水省、農協、農林族議員の密接な関係に、大きな亀裂が生じている。今回、農協改革がたとえ期待する成果を上げなかったとしても、農政トライアングルに亀裂を生んだことの意義は大きい。

関連記事

powered by weblio