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第1回 国際食料・農業政策アカデミックカンファレンス

世界のジャポニカ米と日本産米の競争力

去る2月13日に宮崎県宮崎市で「世界のジャポニカ米と日本産米の競争力 」をテーマに掲げた国際学術調査研究の報告会が開催された。日本の研究者に加えて、世界的に著名なコメの研究者である米国・アーカンソー大学のE.ウェイルス教授、韓国・高麗大学のD. B.ハン教授が招かれ、講演した。当日の模様を誌面で紹介する。今回は、日本の研究者らによる「日本のコメは国際競争力がどれくらいあるのか?」「生産コストと品質から診る競争力は?」といった報告を取り上げる。 (取材・まとめ/加藤祐子)
同会に際して、世界のジャポニカ米研究グループの研究代表者を務める九州大学大学院農学研究院の伊東正一教授が挨拶した。1990年にジャポニカ米の研究を始め、これまでは主に海外の情報だけを集めていたが、研究テーマに国内の技術競争力についても加えていかなければならなくなった。今回は科学研究費の「外国産ジャポニカ米の官能食味試験評価および国産米競争力分析に関する学術研究」という研究テーマの中間発表として、情報をみなさんと共有しながら、さらに情報交換を行ないたいと述べた。

セッション1
外国産ジャポニカ米の
官能食味試験評価

お米の味、品種改良において、日本を代表する研究者である松江勇次氏(九州大学特任教授)と、あきたこまちを中心に品種について研究をしている加藤和直氏(秋田県農業試験場・研究員)が報告した。
この研究を進めるにあたってのポイントは、その国の嗜好性が重要で、その嗜好性に基づいた食味評価と、普及している品種の食味を明らかにすることである。
日本の食味官能試験では、基準となるお米と比べてどうであるかを判定する。外観については、光沢、白さ、粒の形、形崩れていないか、精米時の胚芽が残っていないか。香りについては、嗅いだときと食べた時の鼻に抜ける香りが良いかどうか。味については、うま味と甘み。硬さについては、噛んだ時に硬いか柔らかいか。粘りは噛んで離すときの感覚。これらの各項目に加えて、直感的な総合評価を行なう。
まず、日本でおいしいと言われるお米はどういうものか。外観(見た目)は白くて、ツヤがあるもの、味はほんのり甘みがあるもの、適度な粘りがあるもの、硬さは硬いよりは柔らかいもの、香りは食べた時に邪魔しないものが挙げられる。日本人が良食味と判断する場合には、外観も味も重視していることがわかった。硬さについてはこだわりが少ないようだ。
次に、米国産ジャポニカ米、特にカルフォルニア産米の日系人を含まない米国人の嗜好性を日本人の好みと比較した。ジャポニカ米は米国ではカルフォニア州を中心に普及しており、ロサンゼルスとサクラメントで、日本で一般的な外観、味、粘り、硬さによる総合評価の調査で行なった。日本と米国で同時に試験をした経験は少ないので、面白い結果が表れた。味わうという感覚が外国の人にとっては理解がしにくいようで、日本人が好む品種と米国人の好みは違うことが明確にわかった。特に粘りの強い品種は好まないようだ。
きらら397を基準米として、米国産米の食味を10点法で評価したところ、国産米と同様に、総合評価と味が良食味米の判断基準になっていた。特徴的なのは香りで、独特の香りがある。コシヒカリ単一のTAMAKI GOLDでも香りが大きく残る。水分含有率が低めで、白米の水分含有率に比例して、食味が劣る傾向が認められた。
続いて、アジアでの食味の評価方法ならびに品種の実態調査を行なった。中国では、外観や味、香りについて100点法で評価されてきたが、評価項目が多く煩雑で、日本の方式に見直されてきた。コシヒカリやあきたこまち並みの吉林省産や遼寧省産の品種が好まれている。一方、台湾での評価方法は、日本の評価方法をベースに改良されている。
ミャンマーでは、食味の良い悪いはアミロースの含有量で評価している。一般に22前後を良食味と言われている。ポッサンムエというコシヒカリと遺伝子構造が似ている品種が良食味として普及している。重量ではなくミルク缶を用いた量り売りで、販売価格はキロ当たり35~60円である。
あきたこまちを基準米にして、米国で良食味と言われる品種M-401を比較として入れて、中国・台湾産の銘柄と比較をした。白米の水分含有率は適当範囲内で、品種の銘柄に「香」と明記されたいわゆる香り米の品種は、ある程度高い評価が得られたものもあれば、香りが大きくマイナスになるものもある。中国・台湾産米も総合評価と味・香り・粘りとの相関が得られたが、品種構成では香り米が多いことも判明した。
外国産米の食味官能試験を行なう場合は、白米の水分含有率が大きく関係している。きちんと水分を保持することが重要である。香りが強い品種が多いので、パネラーに先入観を与えるということがわかった。
質疑では、コメの調理の仕方によって食味の評価は変わるのではないかという質問に対しては、だからこそ、お米そのものの食味の世界標準をつくりたいという思いで取り組んでいると松江氏は答えた。

セッション2
国際米の国際競争力
強化の可能性

はじめに南石晃明氏(九州大学大学院農学研究院・教授)が稲作経営における生産コスト低下の可能性と経営戦略について報告した。
生産コストの低下の可能性は、農業生産法人の育成をし、規模を拡大することで実現できるとした。作付面積でみれば、欧米に比べて経営規模が小さいことは知られているが、売上規模で見れば、農業生産法人の経営規模は小さくない。売上高が3億円規模の農業生産法人が急速に増えていることからも実現可能という。また、ICTを活用することで、生産技術や生産管理の革新をすることで、キロ当たり150円程度は達成できるという見通しを持っている。さらに収量増が見込めれば、もっと下げられるだろう。

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