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【実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!】
第五章 貸借対照表で経営感覚を養おう(3)「負債」の眺め方と分析
- 齊藤義崇
- 第5回 2015年04月28日
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規模拡大、多角化、経営転換。新たな挑戦をし、直接の売買などの取引が増加する農業経営にとって、資金繰りが最も重要な時代となったと言っても過言ではない。そこで3つの金融用語の解説から、今回は始めたい。
ひとつ目のは、相手を信用して金銭やモノを貸与することで、返済能力のある相手に信用を与えるという意味から、そう呼ばれている。たとえば、資材を購入して、即金ではなく代金を後払いにする。これも与信である。
さらに、初めて信用を与えることを、初期与信(スクリーニング)と呼び、相手の経営状態に注意して、取引量や金額を調整することを与信管理(モニタリング)という。与信管理の結果、信用力が高い相手ほど、貸し手は取引量や限度額を大きくすることができる。逆に信用力が低い相手には、その枠が狭くなる。
2つ目はである。小切手や郵便為替、銀行振込、手形など、現金以外の方法によって、金銭を決済する方法である。古来の日本では、沢山のお金を遠くまで運ぶのは、途中で強奪される危険性が高かった。その危険を回避するために為替(送金システム)が生まれたという。江戸時代には江戸(東京)と大坂(大阪)を結ぶ取引が増え、両替商や大商人が仲介役となり、為替(手形)取引が特に発達した。驚くのは、資金運用、投資、貸付など資本主義の成立に欠かせないシステムは、明治維新以前に成立していたことである。
皆さんに一番馴染みのある為替制度といえば、全国銀行データ通信システムがある。個人や企業が、異なる銀行間で送金を依頼し、金融機関同士の決済を行なうための仕組みのことだ。日本国内のすべての銀行の貸借関係を相殺し、過不足が日銀当座勘定で清算する。銀行に限らず、信用金庫や信用組合、農業協同組合、漁業協同組合なども全銀システムに加入している。ただし、午後3時以降や土日祝日に他行宛てに振り込むと、翌営業日回しになる。その解決に向けて、システムの見直しが議論され、取引時間の延長や365日24時間対応などが昨年から話題となっている。
最後の3つ目は担保である。金銭の借主が、債務を確実に履行するように、借主(債務者)が貸主(債権者)に不動産など提供しておくことである。担保には物的担保と人的担保がある。それぞれ説明しよう。
物的担保として物や財産などの特定の財産を提供する場合は、次のような権利を設定する。質権とは、貸主が弁済を受けるまで担保目的物を留保することで、抵当権とは、不動産を担保とするが、その不動産を引き続き使用できるようにしておくことである。良く聞く根抵当はその一つで、限度額を定めて複数の債権に対する担保とすることで、このほかに仮登記担保などがある。
一方、人的担保とは、保証人のこと。借主と同じ義務を負う保証人を、連帯保証人と呼ぶ。悲しい結末の人間模様を浮き彫りにするドラマにはつきものなので、皆さんもよくご存じのはずである。
これら、与信、為替、担保の3つは、「知ってると格好いい用語」であり、「知っておくべき用語」でもある。融資を受ける際に、きちんと勉強して臨むべきだろう。親切に印鑑の押す場所だけを、指示してくれる金融機関ばかりではない。私も農業経営に就いてからは、このような用語を耳にすることが増えた。知らないと不利益を被ることもあるので、これを機に頭に入れておこう。
融資を受ける心構え
農業の場合、農地を根抵当にして、金融機関に融資を受けることが通例である。根抵当で評価された限度額を上限に、金融機関は資金を貸す。このときの資金は負債となるが、貸し付けの実態は、返済原資や返済能力など詳細な分析はなされず、借り手との融資相談も具体性を欠く場合が少なくない。限度額までは資金の用途に関係なく、残念なことに貸し続けてくれるのである。
さらに、初めて信用を与えることを、初期与信(スクリーニング)と呼び、相手の経営状態に注意して、取引量や金額を調整することを与信管理(モニタリング)という。与信管理の結果、信用力が高い相手ほど、貸し手は取引量や限度額を大きくすることができる。逆に信用力が低い相手には、その枠が狭くなる。
2つ目はである。小切手や郵便為替、銀行振込、手形など、現金以外の方法によって、金銭を決済する方法である。古来の日本では、沢山のお金を遠くまで運ぶのは、途中で強奪される危険性が高かった。その危険を回避するために為替(送金システム)が生まれたという。江戸時代には江戸(東京)と大坂(大阪)を結ぶ取引が増え、両替商や大商人が仲介役となり、為替(手形)取引が特に発達した。驚くのは、資金運用、投資、貸付など資本主義の成立に欠かせないシステムは、明治維新以前に成立していたことである。
皆さんに一番馴染みのある為替制度といえば、全国銀行データ通信システムがある。個人や企業が、異なる銀行間で送金を依頼し、金融機関同士の決済を行なうための仕組みのことだ。日本国内のすべての銀行の貸借関係を相殺し、過不足が日銀当座勘定で清算する。銀行に限らず、信用金庫や信用組合、農業協同組合、漁業協同組合なども全銀システムに加入している。ただし、午後3時以降や土日祝日に他行宛てに振り込むと、翌営業日回しになる。その解決に向けて、システムの見直しが議論され、取引時間の延長や365日24時間対応などが昨年から話題となっている。
最後の3つ目は担保である。金銭の借主が、債務を確実に履行するように、借主(債務者)が貸主(債権者)に不動産など提供しておくことである。担保には物的担保と人的担保がある。それぞれ説明しよう。
物的担保として物や財産などの特定の財産を提供する場合は、次のような権利を設定する。質権とは、貸主が弁済を受けるまで担保目的物を留保することで、抵当権とは、不動産を担保とするが、その不動産を引き続き使用できるようにしておくことである。良く聞く根抵当はその一つで、限度額を定めて複数の債権に対する担保とすることで、このほかに仮登記担保などがある。
一方、人的担保とは、保証人のこと。借主と同じ義務を負う保証人を、連帯保証人と呼ぶ。悲しい結末の人間模様を浮き彫りにするドラマにはつきものなので、皆さんもよくご存じのはずである。
これら、与信、為替、担保の3つは、「知ってると格好いい用語」であり、「知っておくべき用語」でもある。融資を受ける際に、きちんと勉強して臨むべきだろう。親切に印鑑の押す場所だけを、指示してくれる金融機関ばかりではない。私も農業経営に就いてからは、このような用語を耳にすることが増えた。知らないと不利益を被ることもあるので、これを機に頭に入れておこう。
融資を受ける心構え
返済可能な限度を見極めよ
農業の場合、農地を根抵当にして、金融機関に融資を受けることが通例である。根抵当で評価された限度額を上限に、金融機関は資金を貸す。このときの資金は負債となるが、貸し付けの実態は、返済原資や返済能力など詳細な分析はなされず、借り手との融資相談も具体性を欠く場合が少なくない。限度額までは資金の用途に関係なく、残念なことに貸し続けてくれるのである。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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