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岡本信一の科学する農業

「農業を科学する研究会」が発足した理由


もどかしいのは、その答えを調べるのに、費用がかかり過ぎることである。日本の農家が大型化してきているとはいえ、いわば技術開発にそれだけの費用を投入できる方はごくごく限られている。しかしながら、多くの現場で日本の農業者とともに活動してきたが、最先端と思わしきこういった技術は、企業と組んでいるとその企業のものになってしまう可能性が高いのである。このことは、極めて残念である。

農業者の農業者による
農業者のための技術開発を

現実には、この連載も含めて多くの方から土壌物理性の観点の重要性については、共感をいただいている。なかでも、多くの方に提案してきたのは、農業者が開発資金を共同で負担しつつ、栽培技術の開発を行なうべきではないか、ということである。
従来、農業技術の開発は、メーカー、ないしは試験場や普及センターなどの公的研究機関が行なってきた。しかし、現場で本当に必要な技術というのは農業者の間でも語り継がれているわけである。それは数値データを取っていないかもしれないし、条件次第では通用しないものかもしれない。それでも、その農業者の叡智を集めることができれば、もっと実用的で画期的な技術を生み出せるのではないだろうか。
こういったことをここ数年間、語り合ってきた末に、農業者の農業者による農業者のための農業技術開発を行なう研究グループが発足した。「農業を科学する研究会」である。
当面の間、活動の核になるのは、今回のテーマでもある土壌の改善を数値で捉えて、最も簡易で効果のある土壌物理性の改善方法を見つけることである。それだけでなく、段階的に多くの農業者の叡智を集め、農業技術をもっと素早く、ある意味で完成された形で提供するところに目標を置いている。
農業界ではしばしば、技術開発を主導するのはメーカーであったり、技術指導を行なういわゆる「農法」を主催している団体であったりする。多くの場合、栽培技術の情報は一方通行であり、農家サイドは教わる立場であった。
私はかねてから、このように閉ざされた技術開発にどのような意味があるのかを、考えてきた。栽培技術は非常に広がりが大きく、制限などなく農業者からの技術情報の発信や、農業者同士の情報交換なども組み合わせることにより、技術開発の進歩のスピードが早いだろうというのは容易に想像がつくからだ。
こういった取り組みが可能になったのは、インターネットによる情報交換が容易になったことが大きく影響している。農業者は地方に分散しているために地域を越えた情報交換は非常に困難だった。集まって交流するだけでも膨大な手間と費用と時間が必要だったからだ。しかし、インターネットを活用することにより全国のいや、全世界の情報を瞬時に集めることができ、タイムリーに情報交換ができるようになったのである。

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