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第1回 国際食料・農業政策アカデミックカンファレンス

世界のジャポニカ米と日本産米の競争力


また、作物保険のほかに、14年農業法では、補足的SCO保険オプションがPLCに導入された。通常の作物保険に加えて、86%まで積み上げることができるというもので、稲作農家らの要求に応えたものである。
稲作が行なわれる圃場には、常に灌がいが施されており、極端に収量が下がるということは考えられない。一方で、地下水の汲み上げなどにエネルギーや光熱費がかかっている。災害時にも、販売価格への影響より生産コストの負担増加に懸念を抱えており、その補償を目的として策定されたということである。
前述の収入所得補償制度でも、多くの稲作農家はPLCを選択することが見込まれている。つまり、PLCを選択しても、補足的SCOオプションを併用することにより、ARCと同じように収入の86%が補償されることを意味する(図表4)。両者はいずれもセーフティネットとして同程度の補償水準を持つことになり、作物保険における大きな変化である。
これまでの直接支払が廃止されたことにより、稲作農家も銀行も、収入所得補償制度による支払の実像が見えていない。同氏のグループの予測では、今年の稲作農家の平均所得は対前年比15%減となっている。今後5年間で、主な作物の価格は下落が見込まれるため、政府はかなりの額の支払が求められるだろう。

●世界のコメ市場への影響
さて、この14年農業法が米国の国内、そして世界的なコメ経済にどのような影響を持っているのだろうか。同氏らはミズーリ大学のプログラムに参加し、10年間の政策分析をし、それに基づいて予測を行なっている。単なる推定ではなく、マクロ経済的な要因と関連性から見た予測である。アーカンソー・グローバル・ライス・モデルを使って、46の国を5つの地域に分けて、長粒種・中粒種、貿易政策、価格の変動、マクロな変動要因について調べた。
世界の貿易は、10年間で490億tの増加が見込まれ、安定した成長が見られる。ミャンマーやタイ、カンボジア、ベトナムなどの国では輸出が拡大し、ナイジェリアなどの西アフリカ諸国、中東でも輸入が増えると予測している。
一方、生産については、収穫量の伸びは1%未満で、安定した供給が見込まれる。消費の伸びを牽引するのは、世界的な人口増加である。コメの1人当たりの消費は平均的に若干低下するものの、その増加する需要を満たすためには、技術的に多収品種の導入や病害虫対策などを講じるなど、生産性を高めて収量を上げることが必要である。

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