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岡本信一の科学する農業

土壌改良は費用対効果で考えよう


よそに追いつこうと考えるのは無意味

だが、圃場データを記録するだけでは不十分である。重要なのは、そのデータを使って的確に費用対効果を評価できることである。
なにしろ、栽培技術はどんどん進歩しており、今後もさらに高度化していくだろう。そのため、収量や品質のわずかな差が費用や売上高の大きな差となって、経営に影響を及ぼしてくることになる。効果が小さく費用は高いものを使用する愚を避けるためには、正確な評価が必要だ。
しかし、この評価が難しい。
まず、栽培技術の進歩というものは、革新的な発明によって一足飛びに良くなる場合よりも、多くの技術や考え方の積み重ねによって少しずつ進歩している場合が多い。このため、変化に気付きにくいのだ。
そしてそれ以前に、農業における費用のかけ方と効果の現れ方というのは、それぞれの経営体や圃場の状況によって、かなり違ってくる。だから、費用対効果がわかりにくい。
ただ、そもそもで考えれば、詳細なデータを揃えるまでもなく費用対効果を判断できるケースはある。
たとえばこういうことがある。これまで書いてきたように、土壌改良とは有機物などを投入することだと思い込んでいる人は多い。しかし、言葉の意味を考えれば、それは何かをした結果、実際に土壌の状態が良くなって、経営上有利に働いたとわかって初めて、費用に対する効果が現れたということになる。
では土壌が良くなるとはどういうことか。それは、いわゆる化学性、生物性、そして物理性などが良くなることだと考えるだろう。しかしこれら三つは、あくまで土壌改良を構成する要素の一部に過ぎず、これらが改善したからといって、土壌が即経営にプラスに働くとは限らない。
それに対して、最近私が特に重視しているのは播種床づくりだ。以前にも説明したように、播種作業の前の均一性を整えることに成功していないと、その後のあらゆる作業が均一にならない。ということは、たとえ土壌の化学性、生物性、物理性を改善できていても、また有効とされる肥料や資材を使っても、それらの効果が100%発揮されることは期待できないのである。
また、水はけの悪い畑地にいくら土壌改良のための資材を投入しても、効果は現れてこない。先に排水性を良くすることを考えるべきだが、それができない圃場もある。
あるいは、傾斜地で作土がほとんど流失してしまっていて、表面から岩盤まで数cmといった圃場もある。そこで土壌改良をしようというのはナンセンスだ。その前に客土や土壌流失対策の費用対効果から考える必要がある。

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