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とはいえ、露地野菜部門だけでは機械化・効率化の限界と先の見えない市場出荷という2つの閉塞感にぶち当たっていた。そして、50歳を目前に、山原は将来像を思い描いて、新たな挑戦を決意することになる。
収穫体験イベントから農産物の魅力を伝えたい
野菜しかつくったことがなかった山原が関心を抱いたのは果樹栽培。しかも、お客様と直接ふれあう観光農園が狙いだった。
観光農園というコンセプトは、14年前から続けてきた「秋の味覚収穫体験」という親子イベントの延長にあった。市場出荷というJAを相手にした野菜生産者がなぜ収穫イベントを企画するようになったのか。その理由を聞いてみた。
きっかけは日頃キャンプなどに出かける非農家の仲間との何気ない会話だった。子供を持つある女性の「落花生は木になっていると思っていた」という一言に衝撃を受けたという。子供ならともかく、教育する立場の大人でも作物がどう育つのかも知らないのか。憤りを感じたといったほうがいいのかもしれない。それならば、実際に体験をしてもらって、伝えていけばいい。そう思い立った山原は自家用に栽培していた落花生の収穫体験イベントを催した。
落花生が収穫時期を迎える秋に家族連れを招いて、収穫作業を体験してもらい、採れたての落花生を塩ゆでにしてその場で食べる。このイベントは大人にも子供にもウケた。それまで市場を通じて野菜を届けるだけだった山原にとっても発見が多く、楽しかったそうだ。
仲間内での収穫イベントは3年ほど続き、農場主催の定期イベントになっていった。今では近所でつくっているスイートコーンや枝豆も合わせて交流の場となっている。
山から吹き抜ける風や鳥のさえずりは農場を訪れる人を癒すが、農業者にとっては喜べない事情もある。農場周辺の裏山は、かつてゴルフ場開発が盛んだった時期に切り開かれ、サルやイノシシなどが畑の野菜を食い荒らす獣害にさらされているのだ。山原は高さ3.1mの電気柵を設置し、獣害対策を打ってきた。
ところが、野生動物は視点を換えると、農場を訪れる家族連れにとっては日頃出会えない自然環境の一端として受け止められるかもしれない。あわよくば、観光資源になってくれないだろうか。発想の転換ができるようになったのも、「よその人」が教えてくれたことだという。
山原の口にする「よその人」とは、排他的な言葉ではない。自らが主催するイベントに限らず、山原は地域を超えて農業者の集まりにも参加する機会を積極的につくってきた。水稲農家が多く集まる「有機物循環農法研究会(現・北陸東海近畿土を考える会)」では会長を長らく務めた。地域を超えたつながりが、新たな挑戦をする原動力にもなっているように思える。
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山原忠彦 ヤマハラタダヒコ
さくらベリーズガーデン
オーナー
1963年三重県生まれ。四日市工業高校を卒業後、車部品メーカーに就職。9年のサラリーマン生活を経て、実家の畑作経営に就農。ジャガイモやキャベツ、白菜、ダイコン等の露地野菜を栽培する山原農場を経営。果樹栽培に関心を寄せ、2014年にブルーベリーの観光農園をオープンした。経営概要:キャベツ1.5ha、ジャガイモ2ha、カブ2ha、ダイコン/白菜0.5ha、ブルーベリー0.5ha
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