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特集

消費構造の変化に伴う 宅配ビジネスのいま


「それまでは客車便を使っていたけど、ヤマトが宅急便を始めるというので、これでうちも商売を替わらせてもらうぞと思ったね。宅配で商売が大きく変わるぞと。実際、私が手がけたなかでも最も大きなヒットだった」

【最高の原料で作る加工品】

宅配を手がけてから10年ほどが経ったころ、今度は加工品の製造と販売を始めた。理由は従業員に給料を払うためだ。保さんの夫人が渋皮煮やふくませ煮、ジャムを開発した。加工品といっても、原料に使っているのは二流品ではない。青果で販売しているのと同じ生栗である。
「何しろ世界一ぜいたくなお客様を相手にして加工品を作るわけですから、原料が悪かったら話にならないですよ。この原料は俺のところにしかないもの、俺しか持っていないもの、そういうもので勝負しないと」

【「モノ」ではなく、「情報」で売る】

それにしても、なぜ、1kg当たり1800~5000円もする生栗やそれを使った加工品が売れるのか。保さんは次のように見ている。
「それは畑で売っているから。生産現場で売ると消費者は納得するんだろうね。卵もそうらしいよ。スーパーよりも養鶏場で売るほうが高く売れる。それから大事なのは品質。確かな内容のものを提供しなければダメというのは本当だね。宣伝しなければ売れないようなものではダメなんじゃないかな」
とくに宣伝しているわけではない。あくまでも口コミで広がっていっているのである。
それから商品づくりでもう一つ大事なのは「情報」であるという。畑で販売することは情報である。また、商品箱の文字とデザインは高名な日本画家の手によるものだ。これも情報である。
「なぜ売れるんだとよく聞かれるんだけど、正確なところはよくわからない。むしろ、お客様に聞いてくれと言っている。お客様は商品が持っている情報を感じとっているんでしょう。そういう意味で商品作りは情報であり、総合力だと思うよね」

【いいものを少なく】

ところで、日本は人口に占める高齢者の割合が2007年に20%を超え、「超高齢社会」に突入した。こうした時代の変化に応じて売り方を変えるのか。そのことを昭彦さんに尋ねると、「高齢化だからどうこうというのはない。老若男女を問わず品質を認めてもらい、それがわかるお客様に販売するだけですね。基本路線は変えない」とのこと。基本路線とは「いいものを少なく、価値あるものを少なく」だ。保さんは言う。
「高齢化するということは量を食べなくなること。だから大事なのはいいものを少し、だね。価値あるものを少し、でしょう」

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