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売上高線と総費用線との交点(採算ラインを示す損益分岐点の売上高62万5000円)の真下に、限界利益線と固定費線との交点がくる。このとき、変動費が12.5万円、利益は0円となる。このように限界利益とは、固定費の回収ラインから採算ラインを見極めるときに利用するものである。
この売上高を最低生産ラインとして次を考えてみよう。
90万円の売上高が、1個10円の製品を9万個販売して生まれたと設定する。整理表の各項目を9万個で割って算出される製品1個当たりの数値は、変動費が2円、固定費と利益の合計である限界利益が8円。「50万円の固定費を回収するために何個販売することが必要なのか?」という問いの答えは、1個当たりの限界利益8円から回収すると考えると、6万2500個となる。
なお、販売単価は10円であるから損益分岐点の62万5000円と一致する。この経営では現在22万円の利益を生んでいるが、販売個数が6万2500個を超えると「概ねOK」と考えることができ、固定費が変わらなければ、超えた分だけ1個につき8円儲かる計算となる。
このように、限界利益分析は損益分岐点分析の応用編で、採算ラインを見極めるに役立つ。最低生産・販売数量、利益の見込み、増減の損益を予測することができる。ただし必要以上に増益試算に用いて、「捕らぬ狸の皮算用」とならないよう気をつけてもらいたい。
経営体質と限界利益の関係
損益分岐点と限界利益を説明したところで、経営体質の異なる3つの経営体の分析結果を比べてみよう。変動費をA→B→Cの順に高く設定し、変動費率を農場Aは40%、農場Bは30%、農場Cは20%とした。
このうち農場Aは損益分岐点が低い位置にあり、67%と分岐点安全度が一番高く、安全性の高い経営である。逆に、農場Cでは分岐点は高い位置にあり、安全度も3農場で最低である。これまでの分析で考えると、同じ売上、同じ利益であれば、固定費の高い経営は安全度が低いということになる。
次に、この3つの農場が今よりも経営が悪化したり、改善したりした場合に分析結果がどう変化するのかを見てみよう(表1)。生産量が10%減少し、販売単価が10%下がった場合(経営悪化)と、生産量が10%増加し固定費が10%低減した場合(経営改善)をそれぞれ試算してみた。
農場Aは経営が悪化しても利益が一番大きく750万円である。農場Aのように分岐点安全度の高い経営は、生産量の落ち込みや価格の下落に強いことがわかる。利益の大きさは安全度と比例し、限界利益率と反比例している。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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