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図1は乗用トラクターの普及台数の推移である。昭和38年(1963)から農業構造改善事業が始まり、農業機械の導入の際は2分の1の補助金が支給されることもあって機械化は加速する。
図2は馬の飼養頭数の推移であるが、飼養頭数はトラクターの普及に伴って減少し、早くも昭和45年(1970)には交差していて畜力時代は終わりを告げる。
[堆厩肥運搬にトラック導入]
戦後の北海道農業は、馬や羊が著しく減少し始める一方、乳牛、豚、鶏が増え、20年ほど遅れて肉牛も頭数を増やして酪農、畜産へ大きく様変わりする。図3のように、経営の合理化で専業化し、酪農や肉牛は山麓などに集約するようになる。トラクターの普及とともに、農家は馬を飼養しないので圃場に堆厩肥の還元が少なくなり、昭和40年(1965)ごろから地力の劣化を訴えるようになってきた。機械化の問題点だと指摘されると、これをなんとかしなければならない。
家畜の飼養頭数が増えているので、堆厩肥の量は畜力時代より年ごとに増加している。堆厩肥の量が少なくなっているのではなく、偏在が問題なのである。これをどう解決するのかが課題になってきたが、さて両者の距離をどのように縮めるのか。我が国の場合、道路は整備されているのでとくに問題は認められない。運搬効率を高めて隔てられた距離を短縮しようとすれば、欧米のように20t級の大型トレーラーで運搬する方法はどうかと検討された。
ところが、トラクターで牽引する限り、トラクターは低速走行であるので、あまり大きな期待は持てないとされた。
そこで、トラックの機動力を動員すべきとされ、10t車にマニュアスプレッダーやスラリースプレッダーを搭載した方法が注目され、この実用化を検討することになった。我が国の10t車は悪路を走行できるよう三軸駆動に設計されているので、圃場走行を苦にしない。10本のタイヤで走行することもあり、タイヤ踏圧を測定するとトラクター牽引式よりも接地圧が少なく、圃場を踏み固める心配もないことがわかった。
トラックから動力を取り出せれば運搬と同時に圃場へ入って散布作業ができる。十勝の大きな農協はこの性能に着目し、堆厩肥の有効活用に取り組むようになった。やはり工夫で問題は解決できるものである。北海道はかつての畜力時代より堆厩肥が約4倍の量に達しているので、豊かな有機物還元農業を営める条件下にあるといえる。馬鈴薯や甜菜などに堆厩肥は極めて有用であり、このシステムを拡大するのは当然のなりゆきである。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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