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新・農業経営者ルポ

農村経営者は村の歴史の重みで生まれる

かつて大水害に見舞われ、22人の死者を出した和歌山県旧上秋津村。悲惨の記憶と復興の足取りは脈々と受け継がれた。新たな苦難「揺らぐ農村」を前に、眠っていた水脈が目覚めはじめる。行政の補助金に頼ることなく、地域の共有財産を活用しながら推し進めた農村経営。その中心としていまも活動を続ける玉井常貴(71)-27年の歩み。    文・撮影/窪田新之助
玉井は、和歌山県田辺市の上秋津という地区に息づく生活や文化、またそこに生きる人々などを経営資源として捉え、地域づくりに尽力している農村経営者だ。40代でNTTを脱サラし、地区の住民らと都市と農村の交流事業にのめり込んできた。玉井という人物とその仕事、さらには農村経営者を生み出した風土について語ってみたい。

都市農村交流施設
「秋津野ガルデン」

紀伊半島をぐるりと巡るJR紀勢本線。その南西部に位置する紀伊田辺駅から車で東に向かうこと10分、梅やミカンなどの果樹園と住宅地が混在する上秋津地区の一画に、年月を感じさせる黒光りした木造の校舎がある。芝生を敷き詰めた敷地内には、廃校となったこの校舎と同じく木造りのレストランと直売所、宿泊施設、菓子作りの体験工房が併設されている。
ここは地区の住民が出資して、2008年に完成した都市と農村の交流施設「秋津野ガルデン」。玉井は計画段階から主要メンバーとしてかかわり、昨年からこの運営会社である(株)秋津野の代表を務めている。玉井の仕事を知ってもらうため、まずはどんな施設なのか紹介しよう。
「みかん畑」という名前の農家レストランは1人950円を支払うバイキング形式。厨房に立つ地区の女性たちが調理する郷土料理を好きなだけ味わえる。素材となる果樹や野菜は、地域で放棄された畑を借り受け、従業員が育てたものが中心だ。
そうした農産物がどうやってできるかを知るため、農業体験メニューも充実している。この地区は気候条件の良さから柑橘類が一年を通して収穫できる。また紀州梅の一大産地だ。そうした特産の果樹の剪定や収穫、選果、袋詰めなどの作業を通年で体験できるようにしている。
「バレンシア畑」という名前の菓子工房では、主に柑橘類を素材にしたロールケーキやシュークリーム、ゼリーなどを販売。同時に菓子作りの体験会も用意している。
こうしたグリーンツーリズムのノウハウを学べるのが旧校舎である。後ほど詳述するように、秋津野ガルデンは補助金に頼らない経営をしている。このため視察に訪れた人や団体には宿泊・レストラン利用の場合、講師料として1万7000円、それ以外は、講師料として3万2500円を徴収している。

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