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特集

消費から見た日本農業の可能性

農林水産省が食料自給率の向上を喧伝するようになったこともあり、「国産使うべし」というのは、農業界ではいまや疑いを挟む余地のない正当な主張になってしまったようである。ただし、そのことは主張者である農業側のエゴに過ぎない。消費側にとってみれば、飽食の時代にあって、国産だからといって、魅力のない農畜産物やそれを加工した商品を使う理由はないからだ。農業側はそんなエゴイズムに陥るより、消費起点で国産の食材を捉えれば、日本農業にはもっと大きな可能性が生まれてくるのである。取材・文/編集部、窪田新之助、平井ゆか、八木誠一

「食のジャポニズム」
について考える
本誌編集長 昆 吉則

今月号は豊作の秋を喜びたい読者の気持ちに水を差すようなものかもしれない。しかし、職業あるいは事業として農業を行なう人々にとっての新しい可能性を期待させるものであろうとして企画した。

【外国人に食文化を伝える戦略】

「食のジャポニズム」という言葉を考えてみた。19世紀のフランスを中心にモネやゴッホ、ドガといった画家たちを中心に広がった「日本趣味」の芸術文化運動を表す言葉を借りたものである。それは原料としての農産物を考えるのではなく、「消費起点」で農業を考えることをもう一歩踏み込み、これからの日本産農産物の消費で大きなウエイトを占めることになるであろう外国人に向けた日本人の食文化を伝える戦略である。
2015年3月1日現在の日本の「総人口」は1億2689万6千人で前年同月に比べ24万人減少している。そのうち「日本人人口」は1億2528万5千人で前年同月に比べ27万9千人減少している。さらに、世代別にみると0~14歳人口は1617万3千人で,前年同月に比べ15万7千人減り、15~64歳人口は7731万3千人で111万4千人も減少している。逆に65歳以上人口だけは3341万人で103万1千人も増えている。日本が世界一の「超高齢化社会」であることはかねて語られていることである。いまに始まったことではない。かねて本誌が指摘してきたように日本人の1日1人当たりの摂取カロリーは1971年をピークにして減少を続け、2004年に日本人が飢餓線上にあった1946年と同じレベルまで下がった後も減少を続けているのである。
それにもかかわらず、我が農業界は生産者本位の国産米あるいは国産農産物の消費拡大運動を続けている。それは、空腹(欠乏)の社会から満腹(過剰)の社会になった後40年以上も経ち、しかもこれほどの超高齢化社会になってからもだ。飢えていた時代に人は生き延びるために胃袋で食糧を食べていたものが、やがて「舌(おいしさ)」、「目(きれいさ)」で食べるようになり、いまでは「頭(観念あるいは幻想)」で食の「満足」を求めるようになっている。

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