ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

海外フルーツ国産化-夫婦で切り開いた活路

輸入が多数を占める果実であっても、国産志向は強い。愛知県美浜町の(株)萬秀フルーツは、こうしたニッチな果実に注目し成果を上げてきた。付加価値を追求した顧客満足型の農業経営。第1弾として国産では非常に珍しいグレープフルーツやライム、ベルガモットの栽培を始めた。今後はライチやブルーベリーも本格的に取り入れる予定。オーナー制度にも乗り出し、特定の顧客により身近に感じてもらえる農園づくりを進めている。 文・写真/窪田新之助
萬秀フルーツを訪ねたのは2015年12月上旬。名古屋から知多半島の東側に沿って延びる名鉄河和線に乗ってから1時間近く経ったころ、その終点である河和駅に降り立った。雨は少し前にやみ、晴れ間がわずかに見えてきている。駅前でタクシーを拾って、この細長い半島を東から西の内陸部へ向かった。
5分ほどしてたどり着いた先は、ビニールハウスに囲まれた空間にあるこぢんまりとしたログハウス。「萬秀フルーツ」と書かれた看板がかかっている。どうやら目的の事務所のようだ。その木戸を開けると、30代半ばぐらいの男女が待っていてくれた。経営者である大﨑秀樹、佳子の夫婦である。

温州萎縮病の回避策として
グレープフルーツ栽培

ここ萬秀フルーツは2008年の法人化を機に、父・万助から長男の秀樹に代替わりしている。万助が経営者だった時代にはハウスミカンだけを作ってきた。グレープフルーツを取り入れたのは秀樹の代になってから。きっかけは「厄介な病気」が発生したことだ。
10年ほど前に、県内の販売業者から300本ほど購入してきた温州ミカンの苗木を植えたところ、その園地でだけ、収穫3年目から浮き皮に似た症状が頻発するようになった。秀樹は当初、栽培管理が行き届いていないためかと反省していた。浮き皮の果実は毎年一定程度出るものである。だからあまり気に留めなかったのだ。
それから少し経ったころ、秀樹は農協でミカン作りに関する本のページをぱらぱらめくっていた。すると、思わず眼を引き込まれた。なんと、自分の園地で発生しているのとまったく同じ症状をした果実の葉の写真が載っていたのだ。
「うちのは温州萎縮病じゃないのか」
温州ミカンは温州萎縮病にかかると樹勢が弱って品質が落ちる。病原ウイルスを持っている穂木を高接したり、その苗木を植え付けたりすると発病する。土壌を媒介にしても広がっていく。秀樹は、おかしな症状が出ていたのは、購入した苗木が原因と踏んだ。とくに防風垣に珊瑚樹を植えていると、温州萎縮病は急速に広がりやすい。運の悪いことに、萬秀フルーツでは園地の周りに珊瑚樹があったのだ。

関連記事

powered by weblio