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特集

来たれ!TPP【前編・基本講座】


Q1
TPPの日本経済への効果はどの程度のものか。
GDP1.6%との評価もあるが、それは妥当か。
A1
TPP参加各国の関税撤廃による日本製輸出物品の関税負担額の軽減効果は一般的に「静態的効果」とされているが、それだけではなく、投資や競争、SOE(State-owned Enterprise=国営企業)に関する規律などルール面での規律がTPPによって確立されたことが重要である。このような新たなルールはまだ完全なものではないにせよ、今後アジア太平洋地域におけるルール策定の「ひな型」となるものであり、ビジネスを円滑に行なうための法的基盤を提供する。このような新たなルール形成によるTPPの「動態的効果」は「静態的効果」を超えてその波及効果はさらに大きい。
Q2
安倍政権の決定と交渉方針をどう評価するか。
A2
12年12月の政権奪取後の安倍政権の取り組みは準備周到で効率的だった。まず13年2月に日米首脳会談を行ない、そこで日本にとっての農業とアメリカにとっての自動車を日米双方の「センシティビティ」(痛みを感じる部分)として特定し、その後3月に交渉参加を正式決定、4月に基本的には日米で「痛み分け」の構造を作り上げ、いわば「センシティビティの交換」という形で「例外なき関税撤廃」というTPPの当初の大原則を修正し、このことをアメリカに認めさせたのはその後の交渉を促進するうえでたいへん有益だった。
交渉態勢についても内閣府にTPP対策本部を設置し、従来のEPA交渉に比べてより首相権限に直結した形で交渉チームを構成したことは迅速な交渉とそのための国内環境づくりを効果的に促進した。TPP交渉は10年3月から始まっており、日本はそれから3年4カ月遅れての交渉参加だったが、この遅れは日本にとっては不利に働くどころか、むしろ日本が交渉参加してから関税撤廃の例外が認められることになるなど、日本が「ゲーム・チェンジャー」として存在感を発揮したとさえ思われる。さらに、アトランタでの最終局面においては、甘利明TPP担当大臣が交渉決着に向けてマイケル・フロマンUSTRに強く迫るなど、妥結に大きく貢献した形となった。
Q3
市場アクセス(関税撤廃・削減)に関する交渉結果をどう見るべきか。
A3
TPP交渉の結果、日本以外の11カ国の最終的な関税撤廃率は99%台であり、発効後ほぼ10年でTPP参加国の関税はなくなることになる。これは日本にとって大きなメリットがある。他方、日本の最終的な関税撤廃率は95.1%となっているが、これは工業製品では100%と完全な自由化になるものの、農林水産品では81.2%と参加国中最低レベルにとどまっていることによる。ちなみに、日本以外の11カ国は農林水産品についても98.5%の関税撤廃率となっている。(【表1】を参照)

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