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特集

来たれ!TPP【前編・基本講座】



破たんする
農水省の弁明

高い肉と安い肉を混在させた平均で分岐点価格にしているというが、「そもそも海外産の豚肉で分岐点を大幅に超えるような肉は、ごく一部のブランド豚を除いてほとんどない」(業界関係者)。また、日本のようにヒレとロースなど一部の部位だけが重宝されているわけではなく、図3で示したように平均価格は100から300円前後である。分岐点を大幅に超える高い肉が大量に存在しないのであれば、抱き合わせて輸入する安い部位と平均して、きれいに関税を最小化できる輸入価格に合わせられるはずがない。現実の輸入豚肉の卸売価格を長期的に見ていっても、輸入価格より安い卸値の時期がしばしば見受けられる。仕入価格より安く売り続ければ、どんな会社でも赤字となり、倒産する。それでも経営が持続しているのは、脱税が常態化しているほか説明がつかない。
こうした事実があるにもかかわらず、85万t(14年輸入実績、財務省)という輸入量のすべてで、コンビネーション輸入をしていると断定するのが農水省だ。小学生の算数でも、その無根拠さは証明できる。
仮に農水省がいうとおり、すべてがコンビネーション輸入だとしても、国産保護にさえなっていない。外国産豚肉で最も需要があるのは、モモや肩肉などの低価格部位である。一般消費者向けのハムやソーセージに加工されるそれらは、手軽で価格も手ごろ、栄養価も高いため、日本人の食生活に深く浸透した商品であり、日本人の豚肉消費の6割弱を占める。一方、ヒレとロースの高級部位はどうか。トンカツやヒレカツ用だ。国産の人気が高く、すみ分けが進んでいたが、差額関税によって奇妙な現象が起こってきた。
差額関税の負担を減らすためだけに、本来ハムやソーセージには必要のない高価格の部位を輸入しなければならない点だ。メーカーは売りさばけないから、少しでも元を取ろうとダンピング販売をする。スーパーで異様に安い特売があったり、一部外食で利用されている。こうした外国産が国産ヒレやロースと競合し、守られているはずの国内養豚家から、得意とする高価格帯の国内市場を奪っているのである。他方、輸入業者は高価格部位ダンピングの損失を補おうと、本来安さが売りの低価格部位をできるだけメーカーに高値で売ろうと努力する。その結果、ハムやソーセージでの増量剤等の使用が一般化する。これでは、良いものを仕入れて、いい加工品を作ろうという企業努力が発揮されづらい。おまけに消費者は品質と価格がマッチしていないものを買うという羽目になる。

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