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特集

来たれ!TPP【前編・基本講座】


ASEANやAllianza del Pacifico(太平洋同盟=メキシコ・コロンビア・ペルー・チリ)等の穏健派途上国をlike-minded countries(政策や基本方針などにおいて思いを同じくする国々)としてCritical Mass(全体の方向性を決定するような多数派)を形成し、WTO・DDA(ドーハ開発アジェンダ。一般にドーハラウンド)をまとめ、日米欧加の「旧4極」主導でWTOの再興を果たすことを目指すのが現実的なアプローチと考える。しかし、問題はブラジル、ロシア、そしてインドである。つまり、「BRICsマイナス中国・南ア」の国々である。ロシアはまともな製造業がないことと、ユーラシア経済共同体という「似非関税同盟」が問題である。戦略的には中国とロシアを分断し、中国をTPPに組み入れる一方、ロシアについては極東ロシアを「独立した関税地域」としてAPECの枠組みの中でRCEPに参加させ、また日本とのEPAを締結する方向へリードするなど、戦略的に対応することが重要と思われる。

【TPPの
日本経済にとっての
メリットは何か?】

最大のメリットはアジア太平洋地域における生産ネットワークの「シームレス化」である。85年9月のプラザ合意以降、日本の製造業は円高ドル安への流れに対応するために部品の製造拠点を東アジアの新興工業国(NIEs)や中国に移転させ、部品から最終製品まですべて日本で製造する「made all in Japan」方式から、部品は海外で生産し、それを日本ないしは海外のマザー工場で組み立てて欧米市場に輸出するパターンへ、つまり「made by Japan elsewhere」方式へ移行した。
その動きを加速したのがASEANのFTA(AFTA)形成だった。日本の製造業はASEAN域内で最適立地を模索し、各国に直接投資を活発に行なって部品の現地生産を拡大した。その部品をAFTAのCEPT(包括的実効特恵関税)スキームに乗せて40%以上の付加価値を付けた場合には関税ゼロでASEAN域内を動かすことができたため、次第に域内に工程間分業のメカニズムが構築されることになる。
このような産業内分業のメカニズムを確固たるものにしたのは日本のASEAN諸国との二国間EPA(経済連携協定)であり、2002年11月に発効した日・シンガポールEPAを皮切りに次々と締結された。こうして日本からの投資を引き金としてスタートした生産ネットワークの構築による「事実上の統合」(de-facto integration)はEPAという法的枠組みによって補強された「法律上の統合」(de-jure integration)に深化していったのである。そして、その延長線上にあるのがTPPである。

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