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そこでまず、今回の交渉結果のどこが問題なのか品目ごとに解説する。そして、気が早いといわれるだろうが、TPP再交渉戦略について、重要品目ごとに提言したい。
TPPはリビング・アグリーメント(生きた協定)である。妥結した内容が未来永劫、フィックスされるように誤解している人が多いが違う。21世紀型の世界基準となるべき共通ビジネス・ルール構築実現がTPPの目的だ。“生きた”の名のとおり、関税・サービス・投資などの自由化合意について、全12加盟国が実施フェーズに移行させていきながら、今回妥結できなかった積み残し事項についても交渉がいずれ再開される。その際、日本が今回選択した管理貿易の手法は見直しが迫られることになる。そこで政府が同じ過ちを犯さないよう、いまのうちから新たな選択肢を提示したい。
今回は豚肉に焦点を絞り、次号以降、他の品目について解説する。
TPPと豚肉 ホントの説明
【重要品目の
交渉結果と問題】
豚肉
【よくある説明】
TPPで最も大きな影響を受ける品目は豚肉である。なぜなら、関税が現在の1kg当たり482円からTPP発効後10年で、50円へと大幅に下がるからだ。その結果、安い輸入豚肉が大量に入ってくることになる。また、豚肉は外国産と国産で味の差がつきにくいため、価格を重視する消費者が多い。そのため、関税引き下げによって、国内価格が値下がりして、養豚農家に大きな打撃を与える。その影響額は4140億円に及ぶ(日本養豚協会の試算)。
【実際の報道】
「豚肉の関税の大幅削減などで譲歩を余儀なくされた」(1月4日付北海道新聞)、「関税50円はもはや撤廃と同じ」(週刊東洋経済15年12月12日号)
【農水省の説明】
差額関税制度・分岐点価格を維持するとともに、セーフガードを設置。コンビネーション輸入が引き続き行なわれるのではないかと想定されることから、当面、輸入の急増は見込みがたい。生産減少額は、約169億円から322億円と試算。
差額関税制度による
脱税ポークの常態化
もし現在、輸入豚肉に対して1kg当たり482円の関税がかかっているのであれば、【よくある説明】はもっともだ。しかし、事実はそうではない。輸入時の関税を財務省に問い合わせると、1kg当たり482円支払っているケースはゼロである。平均すると、その20分の1以下の平均23円となっている。それを実質の関税率に直すとわずか4%強だ(図1参照。関税収入を輸入額で割って算出した)。TPP以前に自由化しているも同然である。
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