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新年特別企画

私のこれからの経営(後編)

現状維持の考えを捨て、 先人を超えて 発展させるのが使命
かわみつ農園 川満起史

私は、石垣島にある実家の「かわみつ農園」で働き始めて2年目です。とくにマンゴーの栽培は30年以上前から手がけており、当農園を含む3つの農家で構成される石垣島果樹生産出荷組合で、全国でいち早くマンゴーの経済栽培に成功し、約20年前に「ポトリ果マンゴー」の商標登録を行ないました。八分熟の段階でハサミで切り落として収穫したものでも「完熟」とうたわれることの多いマンゴーにおいて、私たちのポトリ果マンゴーは樹上で完熟して自然落下したものを収穫し、産地直送で販売することにこだわっています。産地直送にこだわる理由は、収穫後に追熟した3日目の一番良いタイミングでお客様のもとへ届けたいという思いと、一般市場や量販店に陳列すると食べごろを過ぎた質の悪い商品が並んでしまう可能性があり、ポトリ果マンゴーのイメージを低下させる恐れがあるからです。
また、自ら販売価格を決めて自己責任の下で販売する、という考えも産地直送を行なった大きな理由であり、昨今のTPPの影響はほとんどないと考えています。
私たちの経営を考えるうえで柱となるのは約30年で培った栽培の経験と技術、それに伴うポトリ果マンゴーのブランド力だと考えています。そして、そのブランド力を育ててくださったのは他でもなくお客様です。産地直送を行なうことで商品への感想、ご指摘を直接聞くことができ、品質向上への大きな助けとなりました。
お中元や贈答用として購入していただくことの多い商品のため、品質はもちろんのこと、ポトリ果マンゴーのブランド力を守ることも今後の私の責任だと考えています。
今後の経営を考えたとき、私がいまやらなくてはいけないことは何よりもそのブランド力に見合うマンゴーの栽培技術を習得することです。農業の今後の展開を考えると、加工品の販売やレストランの経営、アンテナショップの設立などが挙げられると思いますが、いずれも、私に土台となる高品質マンゴーの栽培技術がないと話になりません。いまは新たな展開を行なうよりも私自身の修行が最優先だと考えています。しかし、その修行をしながらでも、広く見聞を深め、世の中の変化をキャッチするアンテナを張り、お客様の声に耳を傾け、5年先か10年先かわかりませんが、新たな展開を行なうときに向けてアイデアを蓄積することにも努めていく必要があると思っています。
いろいろな農業経営をされている方にお会いして勉強するなかで、農業にはこのやり方なら成功するという決まった形はないのだと感じています。ただし、成功している方に共通しているのは、農業経営にコンセプトや哲学があり、お客様のニーズに期待を上回って応えていることだと思いました。そして、それらをブレることなく継続していくことが大切なのだと感じました。
私は常に心がけていることがあります。「現状維持は緩やかな衰退だ」ということです。
うまくいっているからといって何も考えずにいままでと同じことを続けていると、自分でも気づかないうちに徐々に衰えていくという意味です。気候も土壌も年々変化していきます。お客様のニーズも変わってきています。事実、贈答用から自分へのご褒美といった買い方をされるお客様も増えています。父と同じようにではいけないと思っています。超えようと思わないと現状維持すらできないでしょう。先人たちが長い期間をかけて築いてきたものを私たちは先人たちより短い期間で習得することができます。それなら先人たちを超えないといけない。それが使命であり、本当の意味の「学ぶ」ことだと教わりました。

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